日本市場重視の作り分けが光るスイフト
スイフトもグローバル市場を想定した車だが、他社とはちょっと違う社内事情がある。それは、他社だと大黒柱となる北米市場のかわりに、インドを中心とする新興国市場が極めて重要ということ。軽量化を大きな特徴とする新プラットフォームも、その流れの中からの選択だ。
さらに、スズキにとって日本市場も大切な柱だから、パワートレーンも豊富な選択肢を用意している。
走りを重視するユーザーにとって、いまやスイフトスポーツはこのクラスの“定番”だし、ユニークなシングルクラッチハイブリッド、1Lダウンサイズターボ、ベーシックな1.2L直4エンジンと、多彩なバリエーションが用意されている。
特筆すべきはトランスミッションも目的に応じてきめ細かく作り分けていること。スイフトスポーツの6MT、ATもターボは6速AT、他のベーシックグレードはCVT、ハイブリッドは5速AGS+モーターというラインナップ。
こういう、日本市場に真摯に向き合った車作りは今や貴重な存在。日本市場専用の軽自動車なら当たり前だが、同じ姿勢で普通車にも全力投球してくれるスズキの姿勢を高く評価したい。
良くも悪くも真面目なポロと日産車と違う味を持つルーテシア
■フォルクスワーゲン ポロ/209.8万~265.0万円(GTI除く)
VWのベーシックカーはup!だが、日本市場でシングルクラッチ5速ATのみでは、まともな商売にはならない。ポロが事実上、日本におけるベーシック車だ。
しかし、モデルチェンジで見違えるほど立派になったポロは、もはや以前のゴルフ並みの車格感を持つに至った。
骨太な走りの質感は、エントリー価格200万円を考えると素晴らしいものがあるが、「どうせだったらエントリー250万円のゴルフもあるな」と目移りすること必至。いい車だけれど、輸入車マーケティング的に「あえてポロを選ぶ」決定力に欠ける。
この辺は、VWのドイツ的な真面目さがマイナスに作用。ベーシックな輸入車には、もうちょっと遊び心が必要だと思う。
■ルノー ルーテシア/199.0万~234.0万円(R.S.除く)
台数的には圧倒的にマイナーな存在だが、同じくエントリー200万円の輸入車としてルノー・ルーテシアはポロと真逆な存在だ。
ルノー日産アライアンスの中で、ルーテシアのプラットフォームは、何の変哲もない日産Bプラットフォームが使われているが、デザインと走りっぷりはまったくの別物。
ヴァン・デン・アッカーデザインのスタイルは有機的でセクシーだし、ハンドリングと乗り心地のバランスは「これぞフランス車」という味わい。言いたくはないが、「何で日産車でこの味が出せないの?」という疑問を感じざるを得ない。
日本に輸入されていない車種が多いが、ルノースポール仕様をはじめバリエーションも豊富。「ノートのe-POWERをあげるから、代わりにルノースポール仕様をちょうだい」と言いたくなる。
材料より料理の仕方が重要。そんな言葉がふさわしいのが、ルーテシアという車だ。
■フィアット 500/199.8万~284.1万円
最近のフィアットはベーシッククラスで売る車がなく、そろそろ10年選手となるフィアット 500に多くを依存している。
アバルト仕様も含めてバリエーションは豊富だし、デザインや内外装の質はいまだに色褪せていないが、ミニのようにきちんと世代交代を重ねてゆかないと、一代限りで消滅する恐れがなきにしもあらずだ。
ユーザー層を広げるには、まずほとんど2+2のパッケージングが要改善。おしゃれな足としてプライベートユースに使うにはいいが、ファミリーカーとして使おうとすると即選択肢から落ちる。
また、2気筒0.9Lターボのツインエアも、マニア的には面白いものの一般人にはハードルが高い。
SUV版の500Xはデザイン的に「ぜんぜん違う車」になっちゃったが、500の可愛さをキープしたまま、実用性を向上させたモデルチェンジが望まれる。
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