実力はパッとしないが“飛び道具”で価値を証明したノート
日産は率直に言って日本市場への取り組みが淡白すぎる。グローバルメーカーの宿命かもしれないが、「日本市場に投資しても儲からない」という経営陣の意図が透けて見える。
タイ工場製の輸入に転落したマーチは論外としても、ノートも褒められたものではない。最初の企画からしてグローバルコンパクトの中で一番を奪る気などさらさらなく、「然るべきコストで然るべき台数を売る」という中途半端なもの。
後に欧州でトレンドとなるエンジンの直列3気筒化はいち早く取り入れたが、燃費でハイブリッドに太刀打ちできず。競争の激しい日本市場では長らくパッとしない存在に甘んじていた。
しかし、日産のエンジニアは諦めていなかった。リーフで蓄積した電動化技術をうまく応用すれば、ノートにももうワンチャンスある。のちにe-POWERとして世に出るシリーズハイブリッドの開発を、水面下で静かに進めていたわけだ。
そして、ノートe-POWERがデビューするや、2018年上半期に日産車としては48年ぶりの国内登録車販売ランキングNo.1を獲得した。
ノートが遅咲きで大輪の花を咲かせた理由は、やはり電動化のポテンシャルが思った以上に高かったことだ。
専門家は多くが「e-POWERは昔から存在するシリーズハイブリッドで、目新しいものは何もない」と評価していたが、一般ユーザーはワンペダルドライビングと電気モーターならではの強力なトルク感を高く評価した。
ベーシックカーにこそ、こういうキャラの尖った“飛び道具”が必要。それを証明したのがノートe-POWERの大ヒットだったといえる。
コア層狙うマツダらしい“質の高さ”光るデミオ
マツダのブランドポリシーは明確で、世界シェアは2%でいいから熱烈に支持してくれるユーザーを獲得する、というもの。
デミオもこのコンセプトに則って、前モデルからキャラクターを変えてきている。それは「ベーシックカーの中ではハイクォリティな車」という性格だ。
1.5Lディーゼルを目玉とするSKYACTIVエンジン。そして、マツダならではのこだわりを持った足回りの作り込み……。
ベーシックカーはどうしても「台数を増やさないとコストが下がらない」というプレッシャーが働くから、苦しくなると大幅値引きでレンタカーや営業車が増えるという悪循環に陥る。デミオもその典型で、最廉価版ばかり売れ、それがフリート市場へ流れていた。
ところが、今度のデミオは一番の売れ筋が最高価格帯のディーゼル仕様。初期は値引き幅もかなり渋かった。こうした売り方ができるたのは、車そのものの商品力がアップしたからだ。
ディーゼル仕様の優れたドライバビリティと燃費性能の高さは、他にライバルが存在しないし、ナビ/インフォテイメント操作系やヘッドアップディスプレイなど、内装の質感も完全にひとクラス上の感覚。有償色のソウルレッドを選ぶユーザーが2割以上に達するという事実が、ユーザー心理の変化を如実に物語っている。
価格上昇をユーザーに納得させる商品力の作り込み。デミオはその稀有な成功例だと思う。
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