■今後は、アドブルーが不足したとしても限定的
今後も世界中で尿素不足は起こりえる。しかし、日本はマレーシアやインドネシアなどからも尿素を輸入しており、輸入元の比率を中国からほかの国にシフトすれば、問題ない。
それ以前に日本の場合、尿素(尿素水=アドブルー)の原料となるアンモニアの8割前後を国内生産しており、生産能力自体は国内消費量を超えるほどあると言われているのだ。
日本では尿素はその9割が、化学肥料の原料として消費されている。保湿成分としてハンドクリームなどに使われたり、火力発電所やトラックの触媒用として使われるのはホンのわずかでしかないのだ。
さらに尿素の原料であるアンモニアは、約半分が尿素になる以外にも肥料用としての利用が圧倒的であるのが現状だ。しかし、今後はアンモニアの生産量は今後も増える可能性は高い。それは2つの理由がある。
1つは石炭の有効利用だ。今後石炭火力による発電は減少していくことが予測される。もちろん石炭をガス化して燃焼させるなど、より高効率な石炭火力は開発されて普及していくだろうが、石炭を燃やさずにアンモニアの原料として利用する傾向が強まることは間違いない。
またオーストラリアの褐炭など低品質な石炭は、燃やすより水素やアンモニアの材料としたほうが効率的だ。アンモニア生成時に発生するCO2は回収して、石油を取り出す際に圧力をかけるガスとして地下に送り込んだり、野菜工場などで利用するシステムを確立する方法が考えられている。
そしてアンモニアは水素を運ぶキャリアとしての役割も検討されているが、直接燃料として利用することも期待されている。すでにこれまでの火力発電設備を活かして石炭とアンモニアを混焼させたり、アンモニアだけを燃料にする技術が開発中だ。
燃料電池でもアンモニアから水素を取り出して発電するのではなく、直接アンモニアを触媒で反応させて発電させる技術も開発されている。
つまり石炭からアンモニアを生成して利用する事業は、今後拡大する可能性が高い。ということは、アンモニア利用が盛んになれば、それを無害化した尿素を今よりも作りやすくなる。ディーゼルエンジンはバイオ燃料を利用して使われ続け、アドブルーを使い続けるという体制も安定したものにできるのだ。
【画像ギャラリー】尿素水国内供給の現状とアドブルーを使用するディーゼルエンジン搭載モデルをピックアップ(12枚)画像ギャラリー
コメント
コメントの使い方