■半導体不足でわかったトヨタサプライチェーンの特異性
別の視点で、トヨタの強味を考えると、サプライチェーンにおける特色が挙げられる。これを筆者、および経済関連メディアが強く意識したのが、2020年半ばのことだった。
四半期決算の報道陣向けオンライン説明会で、経理担当役員は「半導体不足は大きな影響を及ぼしていない」と発言したのだ。その前後に説明会を開いた、ほかの日系メーカー各社は「半導体不足の影響が出ており、今後の回復については不透明な情勢だ」とトヨタとは違う見解を示したのだ。
トヨタの説明によれば、常日頃からティア1(第一次部品メーカー)のみならず、実質的にはティア2(第二次部品メーカー)の領域に属する半導体メーカーとも、中長期における納入計画について担当者同士がかなり頻繁に調整を繰り返しているという。
そのため、2020年中盤時点では、半導体の供給について多少の増減があっても生産への影響は最小限度に食い止めることができたというのだ。
このように、トヨタは「人と人」との関係性を重要視している点を強調した。
この点は、VWやGMなど欧米企業におけるメーカーと部品メーカーとの関係とは、ひと味違うと感じる。いわゆる、日本企業文化における「すりあわせ」なのだが、日系メーカーのなかでもトヨタが行う「すりあわせ」の精度が高いといえるだろう。
■全方位戦略の強味、将来的には果たして……
もうひとつ、トヨタの強味として、製品開発の全方位戦略がある。
トヨタが2021年12月14日に当時のMEGA WEB(東京都江東区)で実施した、「バッテリーEV戦略に関する説明会」で、豊田章男社長が改めて強調したのが全方位戦略だ。
その会見の舞台で収録された俳優、香川照之氏との「トヨタイムズ」CMでの掛け合いでも、EVにも本気、ハイブリッド車にも本気、燃料電池車にも本気という、わかりやすい表現で、多様な形でカーボンニュートラルを目指すと指摘している。
さらには周知のとおり、豊田社長自らがマスタードライバーを務めて、水素燃料を使ったスーパー耐久参戦マシンを操るなど、まさに走る広告塔というイメージで創業家社長として「押しの強さ」を見せつけている。
結果的に株価も上がり、発行株式の時価総額も上昇した。
こうした経営手法が現状ではプラス効果を生んでいるが、今後さらにEVシフトが加速すれば全方位戦略の大幅修正の必要性も出てくるかもしれない。
いずれにしても、トヨタの強味は創業家社長によるフレキシブルでタイムリーな意思決定と、ディーラーやサプライヤーを含むトヨタに関わる「人と人」との繋がりの強さが大きく影響していることは間違いない。
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