■ベースにあるのは衝撃の「47万円」
以上のようにアルトは、実用的で買い得だ。幼い子供がいるためにベビーカーを抱えて乗車したり、自転車を積むならスーパーハイトワゴンのスペーシアなどが便利だが、買い物や通勤で街中を移動する使い方ならアルトで十分だ。
ちなみに初代アルトは、1979年に47万円の低価格で発売された。この金額を大卒初任給ベースに現在の貨幣価値に置き換えると89万3000円になる。現行アルトAの94万3800円に近い。
そしてアルトの歴代モデルの価格推移を振り返ると、いつの時代でも、ベーシックグレードは「1979年の47万円」に匹敵する価格で設定されてきた。
しかし1979年に47万円で発売された初代アルトと、現行アルトでは、車両の中身は大幅に異なる。初代アルトには、安全装備はまったく採用されず、エアコン、時計、左側の鍵穴まで省いていた。
それが現行アルトAには、前述の通り衝突被害軽減ブレーキ、4輪ABS、横滑り防止装置、各種のエアバッグなどの安全装備が標準装着され、アイドリングストップ、エアコン、フロントUVカットガラスなども備わる。
これらの装備が加わったことを考えると、現行アルトAの価格は、1979年に47万円だった初代モデルと比較しても大幅に割安だ。
現行アルトは9代目になるが、その進化の過程でも、歴代モデルは「1979年の47万円」という価値を踏襲しながら各種のメカニズムや装備を充実させてきた。この足跡を振り返ると、アルトはいつの時代でも、ベーシックカーの基準として進化してきたことが分かる。
他社の軽自動車の商品企画担当者と話をしている時、アルトの話題になった。「アルトの商品力と価格は、スズキの長年にわたる軽自動車造りの成果です。ほかのメーカーで同じことができるのは、おそらくダイハツだけでしょう。アルトの真似は、簡単にはできません」。
アルトはスズキだから開発できた商品で、その営みを40年以上にわたり続けてきた。海外では売られていないが、日本の誇れる代表車種だと思う。
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