グリップ型となったのは使い勝手を優先したから
このように、メリットが多いように思えるフラップ型ドアハンドルだが、なぜ欧州車はグリップ型を採用していたのか。それは、ドアハンドルとしての使い勝手を考えれば、グリップ型のほうが際立っていいからだ。
欧州を代表する自動車メーカーのフォルクスワーゲンでは、グリップ型ドアハンドルを初代ビートルの時代(1940年代)から一貫して続けている。事故の時にドアハンドルにロープやフックなどをかけて引っ張ることで救出するまでの時間を短くするためだという。一分一秒を争う交通事故車からの救出の際、ドアが開かなかった(開きにくかった)なんてことは、自動車メーカーとしてはあってはならない。
また、冬場に寒くなる欧州では、分厚い手袋をしたままドアを開けるため、そもそもグリップ型でないと手が入らない。寒い中、わざわざ手袋を外してフラップ型ドアハンドルを引っ張り上げて開けるのは不便すぎる。また上下両方から手を入れられるので、荷物を持った場合でも扱いやすく、そして力を入れやすい(少ない力で開けられる)といったメリットもある。
国産車メーカーもこの使い勝手のよさに納得して、取り入れていったのだろう。
将来的にはドアハンドルは「不要」にも
昨今は、グリップ型のドアハンドルを握ればドアをアンロックできる、スマートキーシステムを搭載したクルマも増えている。また、メルセデスのEQSやヒョンデのIONIQ5、テスラ車などでは、ドアハンドルが自動的にポップアップする「自動収納型」を採用している。
その分コストはかかってはいるが、利便性はなかなか高い。あと数年もすれば、ドアに近づいただけで隣のクルマとの距離をサーチして、自動で開くドアのクルマが登場することだろう。となれば、そもそもドアハンドルは不要(エマージェンシーのために隠しドアハンドルを設ける)になる。
そうなると、かつてのフラップ型や、現在主流のグリップ型のドアハンドルすら、ノスタルジックに感じることになるのかもしれない。次世代ドアハンドルがどういった姿となるのか、今後の展開も楽しみだ。
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