開業日が2022年9月23日に正式決定した西九州新幹線。佐賀県武雄温泉駅と長崎県長崎駅を新幹線で結び、博多駅~武雄温泉駅は在来線特急で接続する「リレー方式」で開業し、現状の博多~長崎間を最速で約30分程度短縮する。
この西九州新幹線の拠点となる長崎県大村市に開設された「大村車両基地」と、実際に運行される車両、「N700S かもめ」が2022年3月20日に一般公開された。
この日、基地内に入ることができたのは、抽選で当選した2600名。この応募枠に対して申し込まれたのは、なんと驚きの12,529 件 27,603人!! 倍率は10.6倍にもなった。やはり九州内からの応募が最多となったが、北は北海道、南は沖縄県からとまさに日本中から応募が届いた。
文、写真/村上悠太
■新しい鉄道には子どもたちの声援がよく似合う
取材前日の3月19日には報道陣、政界関係者等向けの公開が行われたものの、来賓のVIPも顔をしかめるあいにくの雨模様。しかし20日はうって変わって温かく晴れわたり、開場前には地元の子どもたちによる「出発進行!」の掛け声で軽やかに一日がスタート。やはりこうした晴れやかな日、そして新しい鉄道には子どもたちの笑顔のほうがよく似合う。
「大村車両基地」は2022年9月の開業時点では西九州新幹線唯一の車両基地で、1月に搬入された西九州新幹線向け新造車両「N700S」第1編成に続いて、3月に搬入された第2編成と車両搬入が行われ、開業時には全4編成のN700Sが在籍する基地となる。
安全安定輸送に必要な定期的な車両の検査、メンテナンスを行う拠点としての役割を持つ。基地のすぐ横には在来線のJR大村線が走行しており、新駅「大村車両基地駅」が新幹線開業と合わせて新規開業予定。名称から基地内で働く人専用の駅のようにイメージするかもしれないが、一般利用客も使用できる駅だ。
新幹線車両にも自動車同様に「車検」が存在し、それぞれ「仕業検査」、「交番検査」、「台車検査」、「全般検査」とよばれている。それぞれ内容、実施頻度なども厳格に定められており、たとえば「仕業検査」は架線(電線)から車両に集電を行う屋根上に取り付けられているパンタグラフや台車、ブレーキ、ドア、各種保安装置などを分解せずに目視点検で行う、いわば日常的な検査。
一方、120万キロごと、もしくは36カ月以内に行う「全般検査」は、車両を隅々まで分解し、その状態を徹底的にチェックしてくまなくメンテナンスを実施。車両塗装も再度行われ、まさに新車さながらの状態にする最も大規模な検査となっている。大村車両基地ではこの新幹線に必要な4つの検査のうち3つが実施される。残る1つの台車検査については、台車の脱着、車輪周りの検査は大村車両基地で実施し、台車の検査については九州新幹線の拠点である、「熊本総合車両所」に陸路で搬送し実施される。
一般公開が行われたタイミングではまだ基地内にいる「かもめ」は1編成のみ。この編成は、以前の記事(※)でも紹介した、海上輸送と深夜の陸送を経てはるばる山口県からやってきた、あの編成だ。
(※ 新幹線「N700S」が海を渡り、街中を運ばれる…異例のツアーに密着取材)
当時はまだ電源はもちろん入っていないし編成にもなっていなかったので、どこか「新幹線!」という感じが弱かったが、この日はきちんとレールの上に乗り、車内は明るく、そして各車両が連結された6両編成となった完成形でゲストを出迎えた。あの寒い海の上と夜の光景を知っていると思わず、「こんなに立派になって……」と感慨深いものを覚えるのは僕だけだろうか!?
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