今年も、台風シーズンが近づいてきた。2021年・2020年は、台風による被害が比較的少なかったが、その前の2019年・2018年には、台風によって各地で甚大な被害があった。クルマに甚大な被害があったところでは、2018年9月の台風21号で発生した高潮・高波によって、関西地方で浸水の影響とみられる車両火災が23件発生し、焼損台数は230台以上にも及んだ。
台風や洪水による被害は、誰の身にも起こりうることだが、冠水したあとの対処方法を知っていれば、最悪の事態である、車両火災による全損は免れることができる可能性もある。クルマが冠水してしまった場合の対処法について、ご紹介しよう。
文:吉川賢一
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フロア面を超えて浸水したら、絶対にエンジンをかけてはいけない
まず、大前提として、冠水した道路をクルマで走ってはいけない。冠水した道路に遭遇しないためには、大雨による被害が想定されるとき、冠水の恐れがある道路は避けるべきだ。駐車場が冠水する恐れがある場合は、事前にクルマを高台などへ移動しておく必要がある。ただ、「予報よりも大幅に降水量が多くなった」ということはよくあることで、大雨によるクルマへの被害は、防ぎきることは難しい。
一般的な乗用車の場合、フロアを超えて浸水した場合には、エンジンの吸気系に水が浸入している可能性が高く(最大渡河水深が深い、一部のクロカン車は除く)、エンジン内に水が浸入していれば、エンジンをかけた瞬間に、エンジンは故障してしまう。
さらに、冠水した水が海水の場合、電気を通しやすいため、電気系統がショートをすることで、冒頭で触れたような車両火災となる可能性もある。エンジンオフでの駐車中であっても、12Vバッテリーは常時接続しており、電流が流れているからだ。水が引いた後も、腐食が進むことで配線がショートをして自然発火が起き、車両火災となる恐れがある。
クルマのフロア面まで冠水してしまったけれど、クルマを移動させる必要があるならば、シフトポジションをニュートラルにして、人力で押して移動するようにしてほしい。
エンジンはかけずにバッテリー端子を外す
その後の対応として、通常のガソリン車・ディーゼル車の場合、まず12Vバッテリーを保護することが優先だ。浸水、冠水したクルマのボンネットを開け、バッテリーのマイナス端子を、工具(例えば10mmスパナ)を使って外す。外した端子がバッテリーと接触しないよう、ガムテープやビニールテープなど絶縁できる材料を端子に巻き付けて絶縁処理をする。同様に、プラス端子側も絶縁処理を行う。
こうして、火災を防ぐための処置を行ってから、ロードサービスか自動車販売店に連絡すればひとまずOKだ。専門スタッフにみてもらうまで、水が引いてもエンジンはかけてはいけない。
冠水した電動車は絶対に触ってはいけない
また、12Vバッテリーよりも高い、400V~600Vの電圧を持つハイブリッド車や電気自動車の場合、漏電による恐ろしい事態を招く可能性がある。たとえクルマの中に荷物を置き忘れていたとしても、クルマには触らない方がいい。
電動車を製造販売している国産メーカーのなかには、「ハイブリッドカーや電気自動車などの高電圧バッテリーは、設計上様々な対策を施しており、冠水しても感電の危険はない。」としている場合もあるが、冠水などでクルマ同士がぶつかって致命的なダメージを負った場合、どうなっているかはわからない。JAFが推奨する「冠水したハイブリッド車や電動車にはむやみに触らない」というのが最善の行動だ。
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