■人馬一体感のある走りが味わえるか?
その走りはどうか? プロトタイプに試乗してきた時の印象をお伝えしたい。
まずは直列6気筒3.3Lディーゼルターボ+48Vマイルドハイブリッドだ。走りはじめスペックほどのトルク感はないものの、2000rpmを超える辺りからグッと力が湧き出る。そこから高回転まで軽快さはないが滑らかに回るフィーリング。
ただ、4気筒ディーゼルのようなスポーティな印象はなく、あくまでも重厚でジェントルだ。サウンドはディーゼルのビートは感じない……と言えば嘘になるが、濁音が圧倒的に少ない音質のためノイジーではなく逆に心地よさも感じる。
減速時のエンジン停止やEV走行(ごく僅かだが)も可能だが、肝心のモーターアシストの恩恵はあまり感じられず……。個人的には1000~2000rpm前後でもう少し積極的にアシストさせたほうが、実用域のドライバビリティはより高まると思うのだが!?
続いて、直列4気筒2.5L、NA+プライグインハイブリッドに乗り換える。Miドライブ・ノーマルではバッテリー残量がある時は基本EV走行だが、ドーピング的な力強さはなくドライバーのペダル操作に合わせて必要なだけ力強さが増していく印象だ。
この辺りはガソリンだろうがディーゼルだろうが、電動車だろうがマツダはブレていない。気になるEV航続距離は61~63km、欲を言えば100kmくらいは欲しいと思うものの、街中の走行が中心であれば不満はないと予想する。
当然、アクセル開度が増えるとエンジンは始動するが、モーターとエンジンの連携は非常にスムーズで上手。ただ、システム出力327ps/500Nmを感じるかと言われると……あくまでもパワートレインは黒子で粛々と走ると言った印象だ。
ただ、それは仮の姿でMiドライブ・スポーツを選ぶとキャラクターは激変する。PHEVにもかかわらずエンジンは常時始動、メーターも赤基調&専用表示(エネルギーメーター→タコメーター)に変更など、やる気満々だ。
アクセルをグッと踏み込むと、思わず「おーっ、速い」と声が出るくらいの加速力で、システム出力を実感。ただ、電動車に多い瞬時に力が湧き出るような力強さとは違い、ラグが全くないターボのような伸びのある力強さで、かなり内燃機関寄りのフィーリングだ。
どちらのパワートレインもトルクコンバーターレスで動力伝達にクラッチ機構を組み合わせた8速ATが組み合わされるが、共通しているのはアクセルを踏んだ時のダイレクト感、そしてシフト時の小気味よさは「DCT」と呼びたくなるフィーリング。
現時点では渋滞時のようにゆっくりと走るシーンでは僅かに駆動の繋がりなどにギクシャク感が残るが、開発陣も認識しているので市販時までには解決してくれるに違いない。
■骨太なのに柔軟性が高い足回り
フットワークはどうか? 飛び道具に頼らず基本に忠実なオーガニックなボディ/シャシーだが、ノーズの素直な入り方、前後バランスの良さ、駆動のかかり方などは縦置きFRレイアウトの旨味がシッカリ出ているのはもちろん、足の動きやロールのさせ方、4つのタイヤの働かせ方といったコーナリング時の一連のクルマの動きがとにかく自然だ。
例えるなら、骨太なのに柔軟性が高い……と言う、強靭さとしなやかさが上手にバランスされている。クルマの動き自体は決してシャープではなくむしろ穏やかな動きだが一体感が高い走りは、もはやクロスオーバーではなく背の低いセダンと比べてもいいレベルだ。
今回乗った2台は、鼻先に若干重さを感じるが軽快で素直な動きの「ディーゼル+Mハイブリッド」、ドシッと構えるが意外とフットワークが軽いPHEVと、パワートレイン違いによる素性の差は若干存在するが、走り味/乗り味の方向性にはブレはない。
乗り心地は比較的フラットな路面が多かったので断定はできないが、多くの人が快適に感じる乗り心地だと思う。印象的だったのはバネ上の姿勢変化……それも上下だけでなく左右方向が少ないことで、実用域から高G領域まで体がブレにくく、結果として硬い柔らかいだけで判断できない快適さを感じたこと。
この辺りはハンドリングと同じで、より無理なく/より自然な足の動きが、クルマの様々な挙動にシッカリ表れていると感じた。
このようにCX-60の基本素性の良さは、世界のクロスオーバーの中でもトップレベルに位置すると感じた。
ただ、「完璧なのか?」と言われるとノー。現状は「澄んだ水」のような感じでマツダらしい「味」があるかと言われると……。栄養バランスが優れる健康食品でも“旨味”が伴わなければ積極的には食べたいと思わない理論と同じだろう。
市販までにもう少し時間があるので、澄んだ水を活かした「美味しい出汁」のようなクルマに仕上げてほしい。
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