■スズキだけはどこ吹く風!?
(TEXT/福田俊之)
米国は日本車メーカーにとって稼ぎ頭の重要な市場だ。曲がりなりにも追加関税が発動されれば経営への打撃は計り知れない。
1980年代に日米貿易摩擦を経験した日本は、米国での現地生産や雇用を増やしてきた。ただ、市場が成熟した日本で国内工場の稼働率を維持するために、高級車種などは日本から輸出している。
昨年1年間の日本国内生産台数968万台のうち、約173万台が米国向けに輸出された。米国での現地生産は約380万台だからその半分にも満たないが、超円高で鍛え抜かれたコスト削減効果で1台あたりの利益率は現地生産車に比べるとかなり高い。
そうした状況のなかでの輸入制限はメーカーにとっては死活問題であり、到底受け入れられないだろう。
対米輸出台数が最も多いのはトヨタ。昨年は現地で販売した244万台のうち、「レクサス」など約3割の71万台を日本から輸出した。次いでスバルが34万台、日産自動車が33万台、マツダが21万台、そして三菱自動車の8万台、ホンダの3万台と続くが、各社の経営への打撃の度合いには大きな差もある。
例えば、スバルは世界販売106万台のうち、米国だけで67万台を占める。その約5割は利益率が高い日本からの輸出である。国内では度重なる不祥事で苦戦しており、ドル箱の米国まで関税引き上げが現実になれば、経営環境はさらに厳しさを増す。
米国での現地生産から撤退したマツダと三菱自動車も円高基調の逆風のなか、関税を上乗せする事態となれば、輸出に急ブレーキがかかり、収益性の悪化は避けられない。
ホンダも決して“対岸の火事”ではいられない。ホンダの米国販売164万台に占める日本からの輸出はわずか2%に過ぎないが、カナダやメキシコから50万台近くも輸出している。ホンダにかぎらないが、カナダやメキシコに拠点を置くトヨタや日産自動車、マツダなどの生産計画は関税が免除される北米自由貿易協定(NAFTA)が前提だ。
その再交渉が難航しており、NAFTAの行方も注視せざるを得ない。
自動車各社が「米国第一」に名を借りたトランプ政権の身勝手な通商外交に戦々恐々とするなか、「高みの見物」でいるのは米国から撤退し、インドで稼ぐスズキぐらいだ。スズキの株価がトヨタに迫る高値をキープしているのもその証だろう。
■世界の自動車関税とアメリカの悩み
(TEXT/『ベストカー』編集部)
先日の衝撃的な米朝会談といい、25%課税の話といい、なにかとお騒がせのトランプ大統領。中間選挙(2018年11月6日投票)のための人気とりか? という説もあるが、実際、クルマに対しての25%課税が発動すると、日本メーカーにとっても大打撃になること間違いなし。
ここはなんとか今までどおりの課税でいってもらいたいところだが、そもそも25%の課税は高いのか低いのか、ここからは課税について学んでみよう。
クルマにかぎらず世界の国々は自国に輸入される製品には課税をする。その根本的な理由は自国の経済を守るため。
例えば海外で生産された安い商品と国内で生産された商品があるとする。消費者はどっちを買うかというと、安いほうを買いたいと思うもの。
もし海外の商品ばかりが売れると、儲かるのは海外の会社。それでは自国の産業が成り立たなくなる。
自国の産業が成り立たなくなると、国民の収入は減り、国自体が衰退してしまう。
こういった悪循環をなくすために輸入品に対しては課税をかけて消費のバランスが輸入品に偏らないようにしているわけだ。
上の表を見てほしい。これは世界の自動車の関税をまとめたもの。クルマの排気量やガソリン車かディーゼル車か、乗車定員などで実は税率は細かく分かれているが、ここでは排気量1.8Lの乗用車の場合を例にしている。
日本の場合は0%、アメリカは2.5%だが、驚くことにインドは125%、エジプトはさらに高く135%の関税をかけている。なんでそんなに高いのかというと、これは自動車工場を誘致したいからだ。
自分の国に自動車工場ができると雇用も増え、経済が潤う。だからわざと関税率を高くして工場を作ってもらえるように誘致している。
いま話題になっているTPPはこういった関税を撤廃して製品の流れをよくしようというものだが、そこにはクルマも含まれる。だからトランプ大統領はTPPから離脱するために大統領令に署名した。
コメント
コメントの使い方