「そっくりさんメーカー」からEV販売台数世界一へ! BYDが果たしたチャイニーズドリーム

「そっくりさんメーカー」からEV販売台数世界一へ! BYDが果たしたチャイニーズドリーム

 中国の新興自動車メーカー、BYDをご存知だろうか。1995年、深圳(シンセン)での創業からたったの10余年で中国一の電池メーカーへ上り詰め、2003年からは自動車製造を開始。2017年(こちらもたった10数年だ)にはこちらもEVの販売台数で世界一に輝いた中国メーカーの代表格だ。

しかし、すぐ下の右側にある「EV/PHV/PHEVの企業別世界売り上げ Top20(2017年)」を見てみてほしい。トップ20のうちの実に半分を中国メーカーが占めているのだ。中国という巨大市場、NEV規制(New Energy Vehicle規制。中国が進めるEVへの移行政策)の推進という背景を差し引いても、「日本」としてはすこし背筋が寒くなる思いがする。

日本のメーカーさんにもぜひぜひ頑張っていただきたい!!

※本稿は2018年6月のものです
文・写真:ベストカー編集部
初出:『ベストカー』 2018年7月26日号


■EV販売台数世界一! 中国自動車市場の台風の目

お父さん世代だと「下着メーカー?」という人がいそうだが、それはBVDだから! BYDは中国で急成長を果たした自動車メーカーである。

まずは下にある左側の表を見てほしい。これは2017年1年間に全世界で売れたEV/PHV/PHEVのトップ20車を並べたものだ。BYDは9、15、17位にランクインしているが、正直それほどのインパクトはない。

出典:兵庫三菱発信編集局ニュース

ならば今度は右の表をご覧いただきたい。こっちは同じ2017年のEV/PHV/PHEVの企業別全世界販売ランキングだ。そう、BYDのエコカーの売り上げは世界首位! まあその背景には、世界最大のエコカー市場となった中国と、エコカー普及を後押しする中国政府の施策もあるわけだが、それを割り引いてもすごい事実である。

■電池製造で急成長し自動車メーカーへ

そもそも中国の自動車メーカーといえば、第一汽車とか長安汽車といった国有企業が中心だった。ところがBYDはその系列に属さない。BYDは1995年、安徽省の農家に生まれた王 傳福(おう でんぷく)が深圳で創業し、王自身の努力と才覚によって成長した一民間企業なのだ。

BYDは車名に中国歴代王朝の名前を用いている。これは2018年4月の北京ショーに登場した唐(タン)

王はもともと電池の知識に長け、当時、先進国では見捨てられつつあったニッケルカドミウム電池に目を付けて、成長の波に乗った。日本がリードしていたリチウムイオン電池の分野でも、モトローラやエリクソン、ノキアへのバッテリーサプライヤーとなり、2008年には中国一の電池メーカーへと上り詰めている。

しかし王は、電池単体では成長に限界が訪れることを知っていた。そこで2003年、西安にあった小さな国営自動車工場「秦川自動車」を買収し、自動車製造に乗り出した。

■「投資の神様」ウォーレン・バフェットから243億円の資金投資

当初のBYDのクルマ作りは、当時の中国風ものづくりの典型で、先進国の人気車をまんまコピーするというお粗末なものだった。しかし、貪欲に研究開発を続けた結果、三菱の1.6Lエンジンを積む「F3」という小型車が大ヒットし、BYDは中国自動車産業のなかに一定の存在感を示すことに成功する。

そして2008年。世界にBYDの名前が知れ渡る大きな出来事が2つ起こった。

ひとつは、投資の神様と呼ばれるアメリカの著名な投資家、ウォーレン・バフェット氏が、18億香港ドル(約243億円)を出資して、BYD株の約9.8%を取得したことだ。

もうひとつは、2008年の12月。BYDが世界初の量産型プラグインハイブリッド「F3DM」を発売したことだ。

これはまさに王が願っていた電池部門と自動車部門の融合ともいえるプロジェクトで、シボレー・ボルトより約2年、プリウスPHVよりも約3年早い画期的な事件。同時に中国自動車産業の急成長を象徴するニュースでもあった。

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