「クルマの中は自分のプライベートエリア! だから裸で運転しても大丈夫!」なんて考えている人もいるかもしれない。果たして車中は「私的エリア」なのか? それとも「公的エリア」なのか? 今回は車中の定義と、運転時の服装に関して検証したい。
文/鈴木喜生 写真/写真AC
【画像ギャラリー】車内なら何をやっても、何を着てもOKじゃない!(7枚)画像ギャラリークルマは公的エリアと思うのが無難
まず、車中が「公的エリア」なのか、「私的エリア」なのか、という問いについて考えてみよう。車中は法的に定義されているだろうか?
道路交通法を読んでもその定義は書かれていない。では、刑法に照らし合わせてみてはどうだろう? 少し特殊なケースかもしれないが、もし他人が勝手に自分のクルマの中に侵入した場合、その人間はどんな罪に問われることになるのか。
その場合の犯罪名としては「窃盗」「住居侵入」「不動産侵奪」などが思い浮かぶ。しかし、クルマは移動できるので不動産ではない。そのため「住居侵入」や「不動産侵奪」などの罪に問うことはできない。
ただし、クルマに勝手に乗り込んだ人間は、クルマという他人の財産を窃盗しようとしたのだと考えれば、「窃盗未遂」(刑法第243条)に問うことができる。
窃盗未遂とは、窃盗行為に着手した時点で成立する。酔っぱらった人物が、他人のクルマの中で寝ていた場合でも、窃盗行為に着手したと考えれば、その罪が成立する可能性はある。
クルマというものが上記のような性格のものだということから考えると、車中は他人が侵すことは許されない私的エリアと言えるものの、家屋とは明らかに異なる。クルマは家屋などの不動産とは異なり、公道上や駐車場など、存在する場所の制約を常に受けるからだ。そういった意味では、クルマが公的なエリアにあれば、当然ながらその車中も公的なエリアにある空間だと考えられるだろう。
「裸」で運転が「公然わいせつ」に問われることも……
「クルマが公道上や一般施設の駐車場などの公共の場にあれば、その車中も公的なエリアにある」と考えられるのであれば、「裸」で運転することが罪つながることは容易に想像できるだろう。
車中で裸になった場合、道路交通法ではなく、別の法律で罪が問われる可能性がある。そのひとつは刑法による「公然わいせつ」の罪だ。
公然とは、「不特定または多数人が認識しうる状態を指す」(最決昭和32年5月22日刑集11巻5号1526頁)とある。つまり、みんなが見ることができる状態で、わいせつな行為をしたら罪になりますという意味だ。もし裸で運転する行為がこれに該当すれば、6カ月以下の懲役、もしくは30万円以下の罰金を支払うことになる(刑法第174条)。
また、軽犯罪法に抵触する可能性もある。その第1条の20号には、「公衆の目に触れるような場所で公衆にけん悪の情を催させるような仕方でしり、ももその他身体の一部をみだりに露出した者」(条文ママ)と記載されている。
つまり、公衆の面前で尻やモモを露出して、嫌悪感を抱かせたら罪になるわけだ。この場合、1日以上30日未満、刑事施設に収容されるか、1000円以上1万円未満の罰金を支払うことになる。ただし、オートバイならまだしも、クルマを運転しながら尻やモモを公衆に見せることは難しいと思うが。
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