働き方改革の2024年問題で何が変わる? 時間外労働の上限960時間がトラック業界に及ぼす影響は!?

■規制後に運賃は上がるのか?

 総労働時間の規制によってトラック輸送の供給量が減少すれば、経済の理論上は、需要と供給のバランスからトラック運賃は上がるはずだ。そうすれば、運転手の時給も上昇し、労働時間が短くなっても以前と変わらない手取りが得られ、好循環になるはずだ。

 だが実際に、そう上手くはいかないだろう。運賃は、いずれ遠い将来には上がるかも知れないが、すぐには上がらないだろう。そのタイムラグに、ドライバーが「稼げなくなる」と言っている理由がある。

 なぜ、すぐに運賃は上らないのか。トラック運送会社は全国に約5万7000社もある。そのほとんどが中小企業だ。中には残業時間の短縮を守らず、運賃もダンピングする運送会社が出て来るだろう。

 ルールに従わない会社は国交省の監査で指摘され、車両の使用停止や営業停止といった行政処分を受ける。会社名もホームページで公開される。しかし、企業数が多過ぎて監査が追いつかないのである。

 ところで、今年になって「米流通大手ウォールマートのドライバーの年収が11万ドル(約1400万円)に跳ね上がった」というニュースが入って来た。

 アメリカのトラックドライバーはそんなに高給なのか?フルロード本誌でもおなじみ、USAトラックドライバーのPUNKさんに聞いてみた。

 そうしたらいろいろ調べてくれて、「職種により4~8万ドル(5百万~1千万円)ぐらい」だと教えてくれた。日本から見れば羨ましい年収だ。

 日米でこんなに違う原因を考えてみるに、日本では他の産業も手取り月収16万円などと安い。平成以降の日本は、工場が海外に移転、産業の空洞化で労働力がさほど要らない社会になり、労働の価値が相対的に下がった。

 他産業の賃金が上がらなければ、トラックドライバーの賃金の上昇も考えにくい。

■乗り切る方法を考えよう

 最後に労働時間短縮を乗り切る方法を箇条書きにした。それぞれの長所・短所を考えてみたい。

モーダルシフト(鉄道輸送、フェリートレーラの利用)これは、もう以前から進められている。転換可能なものについては既に進んでいる。

ツーマン運行やフェリー乗船(休息時間も移動できる)ツーマン運行では「430休憩」の休憩時間が省け、スピード化できる。反面、気疲れも。長距離フェリーはETC高速料金割引開始後低調だったが、今後脚光。

中継輸送(トレーラ=台車交換、単車=乗務員交代)長距離だが、毎日家に帰れる。渋滞による遅れなどでの待ち時間が課題。

荷役と運転の分業化(海コン方式、スワップボディ)荷役分の労働時間が短縮され、ドライバーは長距離の運転が可能に。ただし、荷役に新たな人件費が発生。

翌日配達の削減(翌々着の貨物を別のトラック便で輸送)現在の宅配便は、関東~関西翌日配達など、早さを売りにしている。しかし、中元歳暮、通販など必ずしも翌着を必要としない荷物も多く含まれる。翌々日配達の荷物を分ければ、運行時間に余裕ができ、中継輸送の運用もしやすくなる。郵便では既に近距離でも翌々日配達を導入。深夜労働削減のため。

 この他、待ち時間の削減(トラック予約受付システム)、着荷主の長時間待機を規制、ホワイト物流推進(荒天時の計画的運休)、手積みの削減(パレット化)、再配達削減(宅配)などが挙げられる。

労働時間短縮を乗り切るためには、荷役と運転を分業する海コン方式のような事業形態も増える必要がある
労働時間短縮を乗り切るためには、荷役と運転を分業する海コン方式のような事業形態も増える必要がある

 かつてのトラック運転手といえば、農閑期の出稼ぎ先などで、ただがむしゃらに働くといった時代もあった。それが現代では、ある程度の余暇が得られるようになった。

 人は家族を養うためや自己実現のために働く。充実した余暇の過ごし方を見つけることも、現代のドライバーには必要なのかも知れない。

 ただ、改正後の労働基準でもまだ、一般職種にくらべ休日が少な過ぎる。給与の水準も上げねばならない。現代のドライバーの環境は、ドラレコ・デジタコ・労働基準によるデジタル監視社会になってしまった。

 労働時短の本来の目的である、安全で活力ある職場を取り戻すことも重要なのかも知れない。

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