利用するなら必読・要注意! 高速道路120km/h区間 軽&コンパクトカーは安全・余裕で走れるか?(後編)

■加減速が燃費に悪影響【120km/h走行の燃費テスト】

都内〜御殿場市内の往路、復路の燃費に比べ、120km/hテスト中の燃費はガクッと悪化
都内〜御殿場市内の往路、復路の燃費に比べ、120km/hテスト中の燃費はガクッと悪化

 テストは各車1台ずつ新東名高速の新御殿場インターから西進し御殿場JCTの先で最高速が120km/hとなる区間を走行。

 長泉沼津インターで折り返して再び新御殿場─インターまでを走行した。

 TEST2の追い越し加速は、左車線を走る大型トラックに追いついた場面を想定し、右車線に移動しながらアクセルを全開にして制限速度の120km/hまで加速するという方法で実施。

 条件を一定にするため、追い越し加速テストを実施した区間は各車同一ポイントで、2回ずつ実施した。

 この間の燃費を車載燃費計により確認したのだが、eKクロススペースの8.7km/Lというのがグンを抜いて悪かったのが印象的だった。

 他車は軒並み15km/L前後なので、60%程度の燃費である。

 eKに関しては、都内〜御殿場までの往路、復路の燃費を見ると往路=14.4km/L、復路=16.7km/Lで、他車と比べて80%程度なので、120km/L走行で極端に燃費が悪化することがわかる。

 たしかに追い越し加速テストでは100km/hから上の加速に特に時間を要しており、負担が大きかったということは実際に乗っていても感じた。

 同じ軽自動車で、NAエンジンのN-BOXよりもタイムが悪いし、実際、110km/hあたりからの伸びは悪く、車速の上昇はジワジワ。

 空気抵抗の影響を大きく受けている印象なのだが、全面投影面積はN-BOXも同程度。

 eKはターボでトルクは10.2kgmと大きく、N-BOXより動力性能には余裕があるハズで、それが燃費にも効いてくるというのが理屈のはずなのだが……。

 テストした全車、やはり120km/hへの加減速が燃費を引き下げる結果となったのは間違いない。

燃費テスト
燃費テスト

■快適性は100km/hと120km/hでどれだけ変わる!?【室内騒音】

100km/h超の空気抵抗に挑む!! 100km/h以上では風切り音が急激に大きくなってくる
100km/h超の空気抵抗に挑む!! 100km/h以上では風切り音が急激に大きくなってくる

 騒音計をドライバーの耳元、さらに後席乗員の耳元付近において室内騒音を計測。

 これも、路面や周囲の条件によって数値に変化が出てしまうので、各車計測区間を同一として、また並走する他車がいないなど、条件差が出ないように実施した。

 全体的に100km/hに対し120km/hになると騒音は大きくなるのだが、特にノート以外の各車では「バタバタバタ」といった風切り音が100km/hを越えると急に大きくなるのがハッキリとわかった。

 ノートは車高が低いだけではなく、細部まで空力性能に気を遣った車体造形なのだろう、速度を上げていっても風切り音を感じることはほとんどなかったし、実際、室内騒音の数値にも変化はなかった。

 騒音計で示される数値とは別に、ルーミーはエンジンの「ガーガー」という音が耳につき、体感的には音の大きな車室環境という印象であった。

100km/h、120km/h走行時の室内騒音
100km/h、120km/h走行時の室内騒音

■鈴木直也が総括!! 120km/h時代の日本の軽&コンパクトカーは安全・余裕で走れるのか!?

ひと口にハイトワゴン系軽自動車&コンパクトカーと言っても、それぞれ乗り比べると100km/hを超える速度域で明確な差を感じる
ひと口にハイトワゴン系軽自動車&コンパクトカーと言っても、それぞれ乗り比べると100km/hを超える速度域で明確な差を感じる

 1963年に名神高速が開通して以来、日本の高速道路は半世紀以上にわたって最高速度100km/hの制限が続いてきた。

 バブル期には高性能車がブームになって100km/hに不満を感じたコトもあったが、やがて低成長時代になるとユーザーの関心は性能から燃費にシフト。

 とくに国内市場をメインとする車種では、費用対効果や燃費効率重視のクルマ作りが定着していった。

 このあたりから、日本車は欧米市場を目指すグローバル車種と、国内およびアジア市場中心のドメスティック車種に分化したように思う。

 例えば、同じトヨタのBセグハッチでも、ヤリスはグローバル組だがパッソはドメスティック組。似たようなエンジン、足回りを使いつつも、ドライバビリティや操安性、あるいは乗り心地などのテイストに明らかな違いがある。

 これは優劣の問題ではなく、市場環境に違いがあればクルマもそれに適応するのが道理でしょ、というハナシなんだけど、今回のテストで感じた問題点は、新東名の120km/h化がその市場環境に明らかに一石を投じた、ということなのである。

 100km/h制限時代に完全適応しちゃったドメスティック組が、スピードレンジがグローバル基準に近づいた結果、限界を露呈しているように思えるのだ。

 たとえば、高速道路で前方に障害物を発見し、ステアリング操作でそれを回避した経験を持つドライバーは少なくないと思う。「100km/h程度のスピードなら、オレは軽く避けられる」、そう思ってる人もいるかもしれない。

 しかし、速度が100km/hと120km/hでは、リスクに格段の違いがある。

●120km/hで実際高速道路を走ると実感する!!

 本来は、障害物を緊急回避する際の指標となる「高速レーンチェンジ」はテストコースで実施すべきものだが、日常よくあるハッとした瞬間の回避操舵ですら、120km/hは侮れない。

 この速度域のスタビリティ性能に関しては4台ともけっして褒められるレベルではなく、あえて順位づけをすれば、ソリオ→eKスペース→N-BOX→ルーミーの順でシャシーの踏ん張りが覚つかなくなる。

 なかでも、ルーミーはいかなる基準をもってしても落第。このクラスのベストセラーカーであることは承知しているが、新東名120km/h区間にはお薦めできないクルマと言わざるを得ない。

 動力性能に関しては、そんなに心配はない。今回のテストでもそれなりの優劣はあったが、ドライバーが快適と感じる速度に差があるだけのハナシ。非力なクルマで無理な追い越しをかけて、追越車線を占拠するようなことをしなければ、安全性という観点からも問題はない。

 しかし、突然のリスクを回避するシャシー性能に関しては、もっと基準を高く持たないとダメ。これが、新東名120km/h化がドメスティック組に突きつけた課題だと思いますね。

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