あおっているつもりはないのだろうが、「あおられているのか??」と思うくらい、車間距離を詰めてくるドライバーをまれにみかける。また、知人が運転するクルマに乗っていて、普段、自分がとる車間距離と比べて明らかに短くて怖かった、ということもあると思う。
車間距離がとれていないと、たとえば前のクルマが急ブレーキを踏んだ場合、追突事故となる可能性が高くなる。車間距離はどのくらい必要なのか。走行中の車間距離の適切なとり方とともに、停車中の車間距離についても、考えてみよう。
文:吉川賢一
アイキャッチ写真:Adobe Stock_Imaging L
写真:Adobe Stock、写真AC 資料:内閣府、JAF
事故全体の3割を占める「追突」
警視庁によると、交通事故形態のうち、「追突」による事故の割合は、全体の3割を占めており、その要因の一つが、「車間距離の不足」であるとしている。実際に、街中や高速道路で見かける交通事故は、「追突事故」が大半だ。
スピード超過や信号無視などの、明らかな違反がともなう事故とは違い、追突事故は(適切な車間距離だったかはさておき)、ほとんどが、運転中にぼんやりしていたり、よそ見をしたりするなど、注意力散漫になることで起こっている。昨今、標準搭載が増えてきた「衝突被害軽減自動ブレーキ機能」は、こうした「追突事故」の多さが背景として誕生した装備だ。
車間距離は「2秒」が目安
走行中の適切な車間距離について、JAFは「前のクルマが急停止しても、安全に止まれる距離」としている。教習所などでは、「車速〇km/hならば△m以上」という指導をすることが多いのだが、これは一般的な乗用車で、2~3人程度までが乗車している場合であり、荷物を運んでいるトラックや、乗用車でも5~7名など多人数乗車をしている場合には、当てはまらない。クルマの質量(慣性)が大いに関係する制動性能は、クルマごとに異なってくるということは、理解しておく必要があるだろう。
適切な車間距離について、覚えやすい目安は、前走車の「2秒後方」というものだ。最初の1秒は危機を認知してブレーキを踏むまでの空走距離、次の1秒は制動力が働くまでの時間、その合計で2秒となる。60km/hならば33.3m、100km/hならば55.6mだ。先行車が通過した位置を見ておき、「ゼロ、イチ、ニー」とゆっくり数えるうちに自車が通過をしない距離が確保できればOKだ。
この「2秒後方」という「車間時間」の指標は、交通心理学会の研究で提唱された目安(千葉工業大学名誉教授 主幹総合交通心理士 山下昇氏の論文参照)。運転していて走りやすい車間距離を割り出し、それらを時間へ換算すると、時速50~80kmの間では1.8秒だったという。逆に1.5秒を切ると危険を感じるそうだ。また、実際の事故統計からも、車間時間が2秒以下での事故は死亡事故を含む重大事故が多くなり、2秒以上の事故では、重大事故とはならなかったことが示されたという。
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