■独自の進化を遂げたグランビア
また、同じ金杯からはトヨタ グランビア(と、姉妹車のグランドハイエース)の車体を用いた「閣瑞斯」というモデルも存在する。もちろん正規品ではあるが、それどころか現在までに3度のモデルチェンジを経て、現在も製造・販売されている車種となる。つまり、中国では独自の進化を遂げた新車のグランビアが購入できるということだ。
そして2020年には最上級モデル「海獅王」も登場。こちらも「閣瑞斯」でお馴染みとなるグランビアの車体を使用しているのだが、さらに事態をややこしくするのが、なんとルノーが関与しているという点である。
少し解説しよう。華晨汽車の金杯ブランドは、2017年に設立された華晨汽車とルノーの合弁事業「華晨ルノー汽車(華晨雷諾汽車)」が現在は所有している。それ以来、金杯ブランドの車種にはルノーの技術がつぎ込まれているという事になる。そして2020年に登場した「海獅王」もその例外ではなく、車体こそはトヨタから譲り受けたものだが、公式の案内には「ルノー・日産・三菱アライアンスが誇る生産体制によって作り上げられた、ルノーの技術とオーソドックスな金杯の融合品」と説明されている。そのため、心なしかフロントマスクも現行のルノーのような見た目となっているのがわかるだろう。
つまりは、「ルノー・日産・三菱の技術がつぎ込まれた、ルノーデザインを持ち、なおかつトヨタのボディを用いた中国車」という、かなり複雑な生い立ちを持つクルマとなる。そしてこれらの関係は全てコピーなどではなく、正規のルートによって構築されたものなのである。
商用車においてはこのような例が多く存在する。他にも有名なのが長安汽車の「長安之光」という商用車。このクルマは見ての通り4代目スズキ エブリイ(DA52/62)だが、先述の海獅よろしく、これも正規に生産が許可されたモデルだ。ベースとなるモデル「SC6350」は1999年に誕生し、そこから2001年に登場の小型バス仕様「SC6370」、より大型のバンパーを備えたスポーツモデル「SC6371」、「長安星韵」という名前で販売された「SC6360」、2009年ごろに登場したフェイスリフトモデル「SC6363」など、多くの派生モデルが生まれた。現在は全く別のボディを使用している「長安之光」が現行型となっており、4代目エブリイのボディを使用するモデルは生産終了となっている。
また、エブリイ同様、同じ世代のキャリイも長安汽車にて「長安星卡(SC1020系列)」という名前で製造・販売されていた。余談だが、長安汽車のこれらモデルはアメリカの会社「タイガートラック」によって輸入され、アメリカ国内で販売されたこともあった。
また、現在は販売されていないが、ヴェヌーシア e30という電気自動車も「コピー車」のレッテルを貼られて各メディアで紹介されていたことがある。
見た目は初代日産 リーフ(ZE0)にそっくりだが、これもれっきとした正規品。ヴェヌーシアとは、日産の東風汽車との合弁会社「東風日産」が展開している中国専用ブランドなのだ。中国ではリーフが日産から販売されなかったので、かわりにヴェヌーシアブランドから「e30」という名前で販売されたという事になる。
リーフベースのe30は2014年に登場し、2018年まで販売。2019年には同じグループのルノーからリリースされているシティ K-ZEという電気自動車がベースとなる2代目モデルが登場した。
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