丸じゃなくていいの? D型が流行の予感? 最新車のハンドルが丸くないのはなぜ

そんな形でもいいの!? 最新の自動車に「丸くないハンドル」が採用される単純かつ納得の理由

 初めて2代目のプリウスを運転した時に違和感を覚えたのは、ハンドルが上下にややつぶれた楕円形だったからだ。だが担当は後に3代目を所有することになるのだが、すぐに慣れてしまって逆にびっくりしたくらいだ。

 最近の日産車は例えばノートなどにD型の下部がつぶれたハンドルが採用されており、非円形のハンドルが増えている。

 ところが非円形どころではなく、まるでF1か飛行機の操縦桿のようなハンドルがレクサスRZで選べるようになった。このハンドルの仕組みと、今後のハンドルの未来を斎藤聡氏に占ってもらった。

文/斎藤聡、写真/TOYOTA、LEXUS、HONDA、MAZDA

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■まるで飛行機!! 最新車で採用される「非円形ステアリング」

レクサス RZ インテリア。「丸くないハンドル」の見た目のインパクトは絶大

 レクサスのBEV(バッテリーEV)レクサス RZに装着されていた操縦桿のような新ステアリングのカタチは衝撃的でした。

 もっとも、それを言うならトヨタ bZ4Xのプロトタイプにつけられていたものもほぼ同型で、トヨタが新たなステアリング形状になにやら意欲的な強い思いを持っている、ということなのでしょう。

 このステアリング形状を可能にするには、ステアリング・バイ・ワイヤーを用いた可変ギヤレシオのステアリングを採用しないとならないので、たぶんそういうことなのだろうと推察されます。

 すると、ステアリングは今後レクサス RZのような形になっていくのでしょうか?

 答えを急げば、たぶんステアリング(の基本形)は、丸くなくなるということにはならないと思います。本名であるステアリングホイールは操舵するための輪といった意味で、ステアリングというコトバを使う限りはイメージとして丸い輪ということになりそうです。

 ただし、ハンドルはちょっと意味合いが違ってきます。ハンドルには輪という概念はなく、手で操作するときに握る部分といった意味合いになりますから、言葉を選ぶとするならステアリングというよりはハンドルのニュアンスが近いのかもしれません。

 話が逸れてしまいましたが、ステアリングであれ、ハンドルであれ、自動車の舵取り装置の基本形は暫くの間、丸い形状から変わることはないと思います(便宜上この後“ハンドル”を基本にします。機構名などでステアリングを使うことがありますが基本的に同じ意味合いです)。

 これは乗用車のハンドル操作をするのに丸い形が理にかなっているからです。ハンドルが丸いのは、ハンドルをたくさん切るのに具合が良いからです。ハンドルが丸ければ、切り足すときにどの部分を握っても操作ができます。皆さんが普段運転しているときのハンドル操作と同じです。

 これが操縦桿タイプだったらそうはいきません。そもそもハンドルを切り足し足すための持ち替えがやりにくくなります。

■考えずに握っている!? 自動車のステアリングの仕組み

トヨタ bZ4Xプロトタイプのハンドル。見た目は航空機の操縦桿に近く、手前に引っ張ったら離陸していきそうな雰囲気だ

 そもそも、なんでハンドルをたくさん切る必要があるのかというと、それはハンドルの操舵力を軽くするためです。

 ハンドルの切り角に対してハンドルのギヤ比が1対1だと極めて少ないハンドル操作(どうだ)量でハンドル操作することができます。レーシングカートがこれに当たります。近いニュアンスだと遊園地のゴーカートもほぼ同じです。

 でもハンドル操作するのにもの凄く力が必要になります。そのためハンドルの操舵力を軽くするためにギヤ比を設けているのです。パワーステアリング登場以前は18:1~21:1くらいのものが一般的でしたが、パワーステアリングが登場してからは乗用車だと15:1~18:1くらいが一般的です。

 スポーツカーだと14:1とか13:1といったギヤ比も見られるようになりました。ちなみにスバル WRXをベースにしたSTIのコンプリートチューニングカー、STI tsタイプRAは11:1という超クイックなステアリングギヤ比が採用されています。

 パワーステアリングがあるならステアリングギヤ比は1:1のほうがクイックでいいのでは? と思われるかもしれませんが、じつはハンドルの操舵力を軽くするだけでなく、ハンドルの微妙な操作には、ある程度のギヤ比が必要になるんです。

 例えばF1のギヤ比も10:1~15:1くらいだと言われています。モナコのローズ・ヘアピン(現フェアモント・ヘアピン)などタイトなコーナーにあるコースではそれに合わせてステアリングギヤ比もクイックにしているそうです。

 そうしてみると、最近のスポーティな市販車とそれほどステアリングギヤ比が変わらないのはちょっとびっくりですね。それだけタイヤのグリップの限界近いところのコントロールには繊細な操作が求められているということなのです。

 ではなぜF1は操縦桿タイプのハンドルでよいのでしょうか。じつは市販車でも交差点の左折以外はほぼハンドルを持ち変えずにハンドル操作ができるのです。その際は180度くらいハンドルを切る必要がありますが……。

 でも、高速道路はもちろんのこと、高速道路のランプウエイやワインディングロードでもほとんどの場面でハンドルを持ち変えずに運転する事ができます。

 もしかしたら、このあたりが操縦桿ステアリング採用の根拠になっているのかもしれません。

 ただ一般道を走るクルマの場合、駐車や方向転換等々、普段車を使う中でハンドルをたくさん切るシーンがたくさんあります。

 その対処技術が可変ステアリングギヤシステムというわけなのです。車速感応型にして車速が低くなるとステアリングギヤ比はクイックになり、車速が上がり繊細で正確なハンドル操作が必要な速度では、ステアリングギヤ比を大きくするメカニズムです。

 かつてホンダがS2000に可変ギヤ比ステアリング(VGS)を採用したモデルがありました。ギヤ比の変化と車速の関係が必ずしもうまくいっていらず、不評の中消えてしまいました。

 現在だと電子制御でもっと緻密にギヤ比の制御を行うことができる(と思われる)ので、あるいはずっと使いやすいものができるのかもしれません。

かつて可変ギヤ比ステアリング(VGS)を採用していたホンダ S2000。技術的に未成熟で不評だったが、現在では電子制御を駆使した使いやすいものができるかもしれない

 ただ、それが一般的になるのかというとコストや扱いやすさという点で折り合いをつけるのが難しく、従来通りの丸いハンドルがこのあとも暫くは主流になるのだろうと思います。

 ではなぜ、メーカーは変形ハンドルをつけたがるのか? という疑問ですが、ふと思いついて“保安基準のかじ取装置”について調べてみたところ、フェンダーへの干渉や、左右の操舵力差などには言及しているものの、ハンドルの形状に関する言及はありませんでした。

 かつて3輪オートにはオートバイのようなバーハンドルも存在しており、ハンドルは必ずしも丸くなかったことに由来しているのかもしれません。

1953年発売のマツダ CLY型三輪トラック。オートバイのようなバーハンドルを装備

 つまり、なぜ自動車メーカーは変形のハンドルをつけたがるのかという疑問に関する答えは単純です。カッコイイからです。

 保安基準に規定がなく、ハンドルのカタチを制限されないのならカッコよさは正義です。実際ここでレクサス RZを例に挙げたように話題になるわけです。

 ですから、変形ハンドルはこのあとも登場してくることは間違いないと思います。見た目のインパクトと使いやすさを、新しい技術やステアリングシステムを使うことでどのくらい平易に仕上げてくるのかが見どころと言えそうです。

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