■レクサスとの両立のために設定された「より高級なクラウン」
人気絶頂のクラウンと、クラウンを越える高級ブランドレクサスをどう両立させるか、それを解消するための一手が高級なクラウンの設定だったのです。
1987年登場の8代目クラウンの最初のマイナーチェンジ(1989年)で4L・V8エンジンを搭載したロイヤルサルーンGを追加設定します。セルシオが登場(1998年10月)より2か月早くクラウンに4L・V8エンジンが搭載されたのでした。
クラウンに、セルシオより一足早く4L・V8エンジンを搭載するロイヤルサルーンGというプレミアムモデルを作ったものの、クラウンが2番目にいいクルマになってしまったことに変わりはありませんでした。
そこでトヨタがとったのが、クラウンの中でさらに高級なクラウンの創造です。
マジェスタの登場は1991年、9代目クラウンの最上級シリーズとして設定されます。しかも、単なる上級グレードの設定ではありませんでした。マジェスタは従来からクラウンが踏襲していたペリメーターフレームを改め、フルモノコックフレーム+専用ワイドボディで登場したのです。
既存のクラウンと明らかに違う、より上級なクラウンを作ることで、コアなクラウンファンの受け皿を作ったのです。
そしてセルシオも、着実にプレミアムブランドとしてのキャラクターを確立していき、2006年、3代目セルシオの販売を終了したのを機に、名前をレクサスLS(4代目)に統合します。
北米で1989年から発売が始まったプレミアムLクラスサルーンであるレクサスLSシリーズは、2006年4代目になって日本でもレクサスブランドとして販売されることになったのでした。
こうしてマジェスタを作ったことでクラウンブランドを傷つけることなくレクサスブランドの設立に成功したかに見えたのですが、バブルの終焉とともにユーザーのセダンに対する人気が薄れてしまいます。
クラウンユーザーの高齢化が進む中、トヨタはクラウンユーザーの若返りを目指します。
2003年に登場した12代目クラウンは“ゼロクラウン”のキャッチコピーを掲げてプラットフォームを刷新。操縦性を大幅に向上させますが、続く13代目では販売台数が落ち込み。14代目リボーンクラウンも販売台数の増加につながらず、セダン離れが進んでいることを物語っています。
その間マジェスタは4代目≒ゼロクラウンで共通のNプラットフォームを採用するも、専用ボディを採用することで、プレミアムサルーンとしての人気を維持します。
しかし、クラウンの14代目=6代目マジェスタで専用ボディを廃止して、クラウンと共通ボディとなります。そして2018年にマジェスタは販売終了します。こうしてみると、マジェスタが、というよりはクラウンの販売台数の減少によるところが大きいように思えます。
レクサスは2013年にレクサス LSのビッグチェンジで、現在のレクサスの顔となっているスピンドルグリルを導入し、積み上げてきたレクサスブランドの盤石化に力を入れ始めます。
国内でもレクサス認知度が上がり、高級車の代名詞はクラウンからレクサス(LS)に移行することができた(とトヨタが判断した)ということなのでしょう。マジェスタはその移行期をスムーズに乗り切るために、トヨタにとってどうしてもなくてはならないプレミアムサルーンだったのだろうと思います。
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