“走りが良い”のはどれ!? 出揃った国産ハイブリッド 走りと燃費の通信簿

 スバルが新型フォレスターに続いて、XVにも「e-BOXER」を追加。

 ハイブリッドといえば、これまでトヨタとホンダが中心だったが、日産がe-POWERを投入し、スズキもスイフトなどにEV走行も可能な本格的ハイブリッドを追加。そこにスバルがe-BOXERを投入したことで、各メーカーのハイブリッドが出揃ってきた。

 今や車は燃費が良くて当たり前。燃費一辺倒のイメージが強いハイブリッドのなかで、それが最も走りが良いのか? 走りと燃費、2つを軸に各社のハイブリッドを評価(※各システムの評価は本文末尾に記載)。

 ひと口に“ハイブリッド”と言っても、その長所・短所はメーカーごとに大きく違う。

文:松田秀士
写真:編集部、SUBARU


スバル e-BOXERは「走りに特化したHV」

XV アドバンス/システム:2.0Lエンジン+モーター「e-BOXER」、エンジン出力/トルク:145ps/19.2kgm、モーター出力/トルク:13.6ps/6.6kgm、JC08モード燃費:19.2km/L

 スバルがフォレスターとXVに新たに投入したハイブリッドシステム「e-BOXER」。

 “新たに投入”と聞くと新システムのようだが、実はシステムそのものは大きくは変わっていない。ただ、バッテリーをニッケル水素からリチウムイオン電池に変更したことで、電気の出し入れ効率が大きく進化している。

 これまではアクセルを踏み込んでも、大きな電流を取り出せないために「そういえばモーターアシストが効いているなぁ」レベルのフィーリングだったのだが、リチウムイオン電池への変更で「なんだこれは!」というくらいアクセルを踏んだ瞬間に頭が後ろに持っていかれる。これはドライブモードをスポーツモードにセットしたら、の話だが。

 e-BOXERに乗ったらスポーツモードを頻繁に使わないと損! それくらい気持ちよく加速するし、中低速コーナーのワインディングではコーナーの脱出でアクセルレスポンスに敏感な気持ちの良い加速が得られる。

 ノーマルモードでの加速感も、XVに採用されていた旧型システムよりも明らかに力強いが、このシステムが燃費に対してフォローかというと、それほど期待しない方が良いだろう。

 それは、e-BOXERのシステム自体の構造が、回生も駆動も1モーターで行うため、従来と大きく変わってはいないから(先代フィットなどの「IMA」に近似している)。

 しかも、ハイブリッド化による重量増もあり、燃費は「良くはなるけれど驚くほどではない」だろう。

 スバル側もそれは理解しているはずで、燃費よりもターボアシストのような加速という走りの楽しさに特化した開発を行ったことが新しいのだ。ちょうど現代のF1マシンのコンセプトに近い。

“燃費の王様” トヨタ THS IIの特長&評価は?

カローラスポーツ/システム:1.8Lエンジン+モーター「THS II」、エンジン出力/トルク:98ps/14.5kgm、モーター出力/トルク:72ps/16.6kgm、JC08モード燃費:30.0km/L

 ハイブリッド車の燃費に優しい部分は、クルマが一番エネルギーを必要とする停止時からの発進加速。

 ATのエンジン車両の場合、ブレーキを離すことでクリープにより動き出し、次にアクセルを踏み込むと自動的に1200~1500rpmあたりまでエンジン回転が上昇して加速してゆく。

 一方、カローラスポーツなどに採用されるトヨタのハイブリッド車(THSII)に乗ると、当然アイドリングストップからの発進時、エンジンはすぐには始動せず少し転がるように加速してから後追いで始動する。

 始動後は、もちろんエンジンで加速するのだが、特徴的なことは走行中にも頻繁にエンジンが停止すること。

 THSIIは遊星ギアを使用して4種類の入出力(モーター駆動、エンジン駆動、モーター発電、駆動出力)をコントロールしている。これは特許技術で、ほかのどのメーカーもこのシステムを開発できない。

 クラッチを使わず、連続可変で駆動をコントロールする。ドライバーの意思、走行条件をコンピューターが判断して最適なエンジンパワー、モーターパワー、回生発電の出し入れを行うのだ。

 エアコンのコンプレッサーを電動式にしたことで、アイドリングストップなどのエンジン停止中もハイブリッド用バッテリーに余裕さえあれば冷房が効く。THSIIが燃費に関しては王様である。しかし、加速力の鈍さや重量増を含めて楽しさはそれほどでもない。

2つの“ホンダ型ハイブリッド”はスポーティさが特長

フィット ハイブリッド/システム:1.5Lエンジン+モーター「i-DCD」、エンジン出力/トルク:110ps/13.7kgm、モーター出力/トルク:29.5ps/16.3kgm、JC08モード燃費:34.0km/L( F、2WD)

 フィットに採用されている「i-DCD」は、7速デュアルクラッチトランスミッション(DCT)に、駆動と発電の両方を行うモーターを組み込んだ画期的なハイブリッドシステム。

 スバルのe-BOXERと同じ1モーターシステムだが、構造はまるで違い、i-DCDはある程度の速度までエンジンなしのEV走行が可能で、燃費もトヨタのTHSIIに迫るものだ。

 しかも、DCTとの組み合わせなので加速が良く、スポーティな走りにも定評がある。残念なことに、度重なるリコールによって実力よりも評価は低い。個人的に家庭の足グルマとして筆者も購入していて、とても気に入っている。

 そして、もう一方の「i-MMD」。こちらはアコードに採用され、クラリティPHEVのハイブリッドシステムに採用されている。

 i-MMDは、駆動用と発電用の2モーターから成るシステム。約100km/h以下の中低速域でエンジンは発電のみを行い、その発電した電力でモーター駆動して走る。

 約100km/h以上の高速域ではエンジンが直結モードとなって、エンジン駆動を主体に走行するというもの。

 “主体に”というのは100km/h以上でもモーターがアシストする状況もあるから。高速域ではモーターよりもエンジンの方が効率が良いから、このような制御を行っている。

 その理由は、モーターは0回転から最大トルクを発揮できるので、クラッチとトランスミッションが必要でなく、そのためモーターと駆動軸(タイヤを含む)を直結にすることができるからだ。

 しかし、速度が高速になると、トランスミッションのない直結モードではモーターの回転数が上がりすぎる。モーターは高回転に弱いから効率が悪くなる。そこでエンジンを駆動直結に切り替えることで高速域の効率を上げるのだ。

 これによって高速域で燃費が悪くなるといわれるハイブリッドシステムの弱点を攻略。中低速域をモーター駆動で走るため、飛び出しからレスポンスが鋭く、スポーティな走りにも応えてくれる。

高速は捨て街中燃費に特化した話題のe-POWER

ノート e-POWER/システム:1.2Lエンジン(発電用)+モーター「e-POWER」、エンジン出力/トルク:79ps/10.5kgm、モーター出力/トルク:109ps/25.9kgm、JC08モード燃費:34.0km/L(X)

 ノート・セレナに採用される「e-POWER」は、ホンダのi-MMDのように、エンジンで発電してモーター駆動で走行する。

 i-MMDとの相違点は、高速域でもモーター駆動のみで走行するのだ。つまり、エンジン直結駆動モードは存在しない。

 もちろん、クラッチもトランスミッションも持たないので構造がシンプル。エンジンは発電効率の良い回転数域を主体に稼働するので燃費も良い。このため、低中速域の多い街中で高い燃費を実現する。高速域をある程度無視しているからノートやセレナといった車種にはピッタリだ。

 また、日産独自で開発した“eペダル”はスポーティで新しい走りの感覚。これは、モーターが回生時に発生させる発電抵抗をエンジンブレーキのように減速時に取り入れたものだ。

 スイッチを入れると、アクセルを離すことで瞬時に強い減速(約0.15G)を発生させ、慣れれば信号待ちでブレーキを使わずに停止できる。コーナリングではその減速を利用して、コーナーを気持ちよくクリアできる。

 リーフとモーターや制御系を供用しているので、製造コストも安く上がる。日産らしいシステムだ。

三菱のPHEVはランエボ譲りで走りも燃費もトップ級

アウトランダー PHEV/システム:2.4Lエンジン+モーター、エンジン出力/トルク:128ps/20.3kgm、モーター出力/トルク:前82ps+後95ps/前14.0kgm+後19.9kgm、JC08モード燃費:18.6km/L(※ハイブリッド走行時)

 アウトランダーPHEVは、ホンダのi-MMDと似たシステムだ。エンジンで発電してモーターで走り、高速域ではエンジンも介入する。また、大容量のリチウムイオン電池を搭載して外部電源から充電し、その電力でEV走行も可能だ。

 リアにもモーターを配した2モーターのAWDということも特徴。ごく最近マイナーチェンジを実施したが、従来モデルとは一変して走りの質感が変わった。

 エンジンは2.0Lから2.4Lアトキンソンサイクルとなり、効率とエンジン音が改善。そして、前後モーターのトルクがアップされ新たにSモードが加わった。

 このSモードでワインディングを走ると、面白いように少ない操舵角でコーナーをクリアする。しかも、その時の安定感も高い。

 具体的には“ベクタリング”という効果でコーナリングしているのだが、これは左右のトルク変動を利用したもの。

 特にアウトランダーPHEVは、リアを1モーターでベクタリング効果を出しているところが凄い! ランエボで磨いたS-AWCの成果がここに結実している。SUVなのにタイトコーナーを攻めるのが楽しくて仕方がない。

“マイルドHVの強化版” スズキ ストロングHVの実力は?

スイフト ハイブリッド/システム:1.2Lエンジン+モーター、エンジン出力/モーター:91ps/12.0kgm、モーター出力/トルク:13.6ps/3.1kgm、JC08モード燃費:32.0km/L

 最近ベンツCクラスに直4・1.5Lターボ+48Vの発電&駆動が行えるジェネレーターを採用するマイルドハイブリッドがデビュー。これはコストや整備性に優れるシステムだ。

 これに対して、スズキがスイフトに採用する「ストロングハイブリッド」は、100Vで駆動する小型モーターを、マイルドハイブリッドのようにエンジンクーリングファン等と同じベルト上ではなく、直接駆動できる位置に置いているもの。

 低出力ながらコンパクトで安価というのがポイントだが、モーターのみでの走行も可能というところがミソ。

 マニュアルトランスミッションを応用したAGSとの相性が良く、AGSの変速ラグストレスをあまり感じなく、AGSのメリットでもあるダイレクト感の高いスポーティな走りが楽しい。

◆各メーカー ハイブリッドの寸評

・三菱 PHEV(アウトランダー)
走りの楽しさ/5
燃費性能/4
総合評価/4.5

・ホンダ i-DCD(i-MMD)【フィット(アコード)】
走りの楽しさ/4(4.5)
燃費性能/4(4.5)
総合評価/4(4.5

・日産 e-POWER【ノート、セレナ】
走りの楽しさ/4
燃費性能/4
総合評価/4

・トヨタ THSII【カローラスポーツなど】
走りの楽しさ/2.5
燃費性能/5
総合評価/4

・スズキ ストロングHV【スイフトなど】
走りの楽しさ/3.5
燃費性能/3.5
総合評価/3.5

・スバル e-BOXER【フォレスター、XV】
走りの楽しさ/3.5
燃費性能/3
総合評価/3.5

最新号

ベストカー最新号

さらばゴーン! どこへ行く? 日産 大特集|ベストカー 1月10日号

 いよいよ2018年は師走も中盤。12月10日に発売の「ベストカー」は、2019年1月10日号となる。そんな最新号では、来年登場が期待されるスモールカーの革命児、4台のスクープはもちろん、自動車業界内外で大きな話題となっている日産を大特集!…

カタログ