■商用車らしくないのが魅力!! 車中泊など標準装備アイテムで楽しめるのがイイ
スペーシアベースが、あえて商用規格としたのは軽自動車というボディサイズが限られた規格の中でラゲッジスペースを有効に活用するためといえるが、そのポイントとなるのが標準装備される「マルチボード」だ。
上中下と3段にセットすることで、ラゲッジを2段で使い分けたり、テーブルとして利用できたり、はたまた車中泊モードにしたりできるのは、非常に便利で、どんな風に使おうか夢が広がる。
もっとも、エブリイバンについていえば市場で高い人気を誇ることで荷室をアレンジするアフターパーツが充実している。作り込んでいけば五分五分といえるかもしれない。
スペーシアベースの優位性として見逃せないのが、乗用車的なルックスだろう。
乗用スーパーハイトワゴンであるスペーシアのボディを使っているだから当たり前といえるかもしれないが、ヘッドランプやフォグランプがLEDとなっているのは軽商用車らしからぬところで、趣味のパートナーとして選んだときに「軽商用だから……」と引け目を感じることも少ないだろう。
■一方荷室はエブリイが優勢!? 車中泊もシートアレンジなしでイケる
一方、先にあげたように×の部分もある。
コンセプトとしてエブリイバンとは違うニーズを考慮したモデルなので、比べても仕方がないところではあるが、ラゲッジスペースの狭さはやはり気になるところだ。前述したように最大積載量も小さくなっているため、純粋に荷物を運ぶビジネスパートナーとして選ぶのは躊躇してしまう。
また、エブリイバンであれば後席を格納した状態で就寝スペースを作り込めるが、スペーシアベースの車中泊モードは前席を畳むことが前提となる。
つまり、目的地まで運転していって、すぐに横になるといった使い方はスペーシアベースでは難しい。車中泊メインで考えているユーザーであればスペーシアベースよりエブリイバンのほうが使い勝手はよさそうだ。
商用車というのは後席使用時に、後席よりも荷室が広くなくてはならない。そのためスペーシアベースでは、とても実用に耐えない補助席のようなリヤシートとなっている。
こうしたリヤシートはエブリイバンでも同様だが、エブリイバンでも上級グレードを選べばヘッドレスト付きの立派なリヤシートを備えていたりする。後席の使用頻度が高いという人はスペーシアベースを選ぶかどうか、熟考したほうがいいだろう。
■エブリイ比で15万円高……小回り性など商用車を求めるならエブリイか!?
軽自動車といえば、小回りが効くというイメージもあるだろう。その点でいうとスペーシアベースの最小回転半径は4.4mと十分に小さいのだが、FRプラットフォームのエブリイバンは、さらに小さい4.1mとなっている。
通常の2車線道路を想定すると、余裕をもってUターンできるのがエブリイバンで、スペーシアベースは少し大きい円を描くことが実感できるだろう。このあたり、キャブオーバータイプの軽商用車に乗り慣れたユーザーからするとスペーシアベースの小回り性は不満に感じるかもしれない。
なにより価格が高めに感じるのは、スペーシアベースのウィークポイントだ。最大積載量が小さいのだから価格も安めなのかと思えば、肌感覚でいうとエブリイバンより15万円程高価な設定となっているように思える。
装備差などを考えると納得できる価格差ともいえるが、絶対的な予算感が上がってしまうことで、そもそも検討する段階で迷いが生じてしまうのも事実だろう。
最後に、いまの時代には見合わない個人的な意見だが、MTの設定がないことはスペーシアベースとエブリイバンを比べたときの、もっとも大きな違いだと感じる。
エブリイバンには5速MTの設定があり、3気筒DOHCエンジンをレブリミットの7000rpm近くまで引っ張って走らせるという楽しみ方が、街なかでもできる。小排気量エンジンの性能を引き出すというのは、それはそれで趣味的な部分であり、筆者個人もそうした部分を求めて5速MTのエブリイバンを購入している。
その意味では、スペーシアベースが候補になり得ないというユーザー層も存在するだろうが、それはそれでニッチなニーズであることも事実だ。
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