■100%成功とはならなかったがクラウンのイメージを変えた
「ゼロクラウン」のキャッチフレーズは、「ZERO CROWN――かつて、このクルマはゴールだった。今、このクルマはスタートになる」(このキャッチフレーズから「ゼロクラウン」と呼ばれるようになった)。
このキャッチコピーには、日本人の価値観が変わってきたことに対する、トヨタの「危機感」が現れているように思う。
ゼロクラウンが登場した2000年代前半といえば、職業や働き方、ライフスタイルなどが多様化し始めたころ。若くして成功する者も増え、様々な年齢層で、好きなクルマを手に入れるようになった時代。
1980年代や1990年代のように、カローラ、マークIIとクルマをステップアップしながら乗り継ぎ、ようやく頂点にあるクラウンに乗るという、「いつかはクラウン」のシナリオが受け入れられなくなりつつあった。
トヨタとしては、確固たる地位を築いていた「クラウン」ブランドの未来に、「危機感」を覚えたのだろう。
デザインをスポーティに見せたり、3.5Lのハイパワーエンジンを投入したりと、これまでのまったり高級クラウン像とは決別するかのような「アスリート」グレードを用意(もちろんそれまでのクラウンを望む方にはロイヤルは残している)するなど、顧客を若返りさせたいというトヨタの思惑は、残念ながら100%成功とはならなかった。
しかし、確固たるブランドを崩そうと、チャレンジをした180系クラウンの姿は、今回の新型16代目クラウンにも通じるものがある。
セダンが受け入れられず、FRの価値も求められなくなり、また、急速に進む技術の進化や、環境性能が高い次元で必要となっているいま、クルマにおいて、これまでの「価値」は通用しなくなっている。
「セダン」であることやFRであること、そして伝統をもつモデルであることを武器にして生き抜いてきたクラウンにとって、この変化は特に厳しい。
この多様性の時代に、トヨタは、クロスオーバーやスポーツSUV、エステート、セダンと、多様な選択肢を用意することで、クラウンの可能性を探ろうとしているのだろう。
■新型ではパワートレインのバリエーションも豊富となるはず!!
いよいよこの秋から、クラウンクロスオーバーが販売開始となる。続いてスポーツ、エステート、セダンが、1年半の間に続々と登場する計画だ。
この3車種はクラウンクロスオーバーと同じく、ハイブリッドのパワーユニットとなるのか、プラグインハイブリッドも出すのか、バッテリーEVになるのか、はたまた水素燃料車となるのか、現在全貌はわかっていないが、「選択肢を増やす」ため、極力バリエーションを増やしてくるだろう。
ここまでは、盛り上げることに成功している新型クラウンだが、本番はこれからだ。しかも、グローバルに広げていくという世界戦略車でもある。新たなステージに突入したクラウン。今回の「革命」は成功するのか、今後に注目だ。
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