俺たちの日産、ホンダはどこへ!? かつての名車にみる“らしさ”と現状

今の日産車は何が物足りないのか?

 その後、カルロス・ゴーンの手にゆだねなければならないほど日産は業績が悪化し、ルノーとの提携も行われ、技術の日産を実感できる新車がなかなか出なくなった。そこへ、R35 GT-Rが登場する。

 だが、それは必ずしも多くの消費者の対象となる車種ではない。電気自動車のリーフも誕生したが、これも一充電走行距離などの点で多くの人には不安を残す技術への挑戦であったといえるだろう。

 だが、e-POWERと呼ばれるハイブリッド車が開発され、ノートとセレナに採用されることで、技術の日産を実感させるクルマを多くの人が手に入れられるようになった。

 あるいは、e-Pedalというワンペダルでの運転、プロパイロットパーキングという自動駐車機能が順次登場し、再び技術の日産を感じさせる独自性が現われだした。日産車に乗る意味や誇りが復活し始めているといえる。

VTECエンジンやオデッセイで魅せたホンダらしさ

VTECエンジンは、1989年のインテグラに初搭載。写真のグランドシビックにも追加された「SiR」に搭載され、以後タイプRを含む様々な車種に展開された

 ホンダは、2輪・4輪・汎用の分野でそれぞれ人々の生活に役立つ動力(パワー)を提供し、暮らしを豊かにしようと取り組むメーカーだ。動力付き自転車から創業し、2輪時代を経て4輪へと事業を拡大した。その中核をなすのは、やはりガソリンエンジンである。

 初代シビックで、CVCC(複合過流調速燃焼方式)を開発し、世界で最初に排ガス規制を達成してみせた。あるいは、VTEC(可変バルブタイミングリフト)という吸排気バルブ機構を編み出し、低回転での実用性と、高回転での高出力を両立させる技術で消費者を魅了し、また世界を驚かせた。

 そのVTECがシビックに搭載され、やがてタイプRと呼ばれる高性能車種につながっていく。日常生活を支える小型2ボックスカーのシビックが、VTECによって高性能マシンになる。それはまさに、“パワー・オブ・ドリームズ”といえる商品の誕生だ。その延長線上に、ミッドシップスポーツカーのNSXがある。

初代オデッセイ(1994年発売)/全高を抑え「セダンの性能とミニバンの居住性」を両立した革新的な発想は多くのユーザーに支持された

 人々の暮らしに役立つクルマとして、次に人気を得るのがミニバンのオデッセイだ。米国生まれのミニバンを、オデッセイは日本に根付かせた。そのオデッセイにも、VTECを搭載するアブソルートと呼ぶ高性能車種を揃えるのである。

 日々の暮らしのなかに、非日常を体感させる高性能を、ホンダはVTECでもたらした。ガソリンエンジンが持つ実用性と夢を、ホンダは消費者にもたらしてきたのである。ホンダファンがいまも根強く存在する背景に、夢のある生活が重なっていたはずだ。

いち早くEVやFCVを開発もハイブリッドで躓き

2002年より日米でリース販売された燃料電池車のホンダ FCX。一般ユーザー向けの販売には至らなかったが、箱根駅伝の先導車としても活躍した

 しかし、時代は二酸化炭素(CO2)排出の削減を求め、電動化への道を選ぼうとしている。ホンダは、1990年代初頭にいちはやく電気自動車(EV)と燃料電池車(FCV)の開発を手掛けた。それらは、パワー・オブ・ドリームズの言葉通り、環境性能を満たしながら高性能で、運転の喜びを体感させる実証実験車だった。

 だが、その後、ハイブリッド車のインサイトを誕生させたが、それは技術への挑戦であっても生活を支えるクルマではなかった。また、あまりにガソリンエンジン主体であることに執着しすぎた。そこからホンダの環境への取り組みは停滞する。

 その後ようやく、ホンダらしい技術に凝った独創のハイブリッドシステム、スポーツ・ハイブリッドを3方式(i-DCD、i-MMD、SH-AWD)開発し、市場導入を行った。

 ところが、1モーター方式のi-DCDでリコールを起こした。技術の成熟より急速な販売実績を追う経営の誤りがあったといえる。環境に対する市場の要請を見誤り、遅れを挽回しようと焦った結果だろう。

 そうした苦い経験を経て、ホンダはNSXにハイブリッドのパワーユニットを搭載し、またクラリティでは、一つのプラットフォームでFCV、EV、PHEVを実現するという、独創的な取り組みを開始した。

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