■今後の値上げの見通しは? 値引きで対処する?
今後の見通しはどうなるのか。自動車メーカーの商品企画担当者に尋ねると、以下のように返答した。
「いつになれば以前の状態に戻るのか、納期の遅れも含めて、見通しが立たない。ある程度まで予想できれば、対策も講じられるが、それができない状態が続いている」。
値上げに対するユーザー側の対策は、機能や装備を入念に確認して、ムダのない買い方をするしかない。「どうせ値上げしてもその分値引きしてくれるから変わらないのでは……」という声も聞かれるが、販売店は次のように説明する。
「販売会社が受け取る1台当たりの粗利は、以前に比べると下がる傾向にある。しかも以前は、メーカーから販売会社に販売奨励金が定期的に支払われた時期もあったが、最近はこれも大幅に減った。クルマの販売に伴う儲けが限られ、車検、点検、ボディコーティング、任意保険などの取り扱いが大切になっている。この状態では、粗利をさらに削る値引きはできない」。
■価格据え置きで装備を減らす隠れ(?)値上げの実態
値上げ以上にユーザーにとって注意を要するのが、価格を変えずに実施される機能や装備の削減だ。改良とは、文字通りクルマを良くすることだから、改良によって機能や装備がカットされていることは想像しにくい。
それが実際に行われている。機能や装備をカットする目的は、コスト低減による実質的な値上げだが、半導体や各種部品の供給不足も絡む。納期遅延を解消するため、一部の機能や装備を省き、それに基づく値下げを行わないと実質的な値上げになるわけだ。要は納期遅延と値上げの2つのニーズに基づいて、価格を据え置いて装備を省く。
例えばN-ONEは、2022年8月に一部改良を実施した。特別仕様車を加えたり、上級グレードの装飾を部分的に変更して、価格は以前と同額になる。
しかし装備内容を見ると、以前は全グレードのワイパーが車速連動型だったが、改良後は一般的な間欠ワイパーに簡略化された。
シートバックポケットは、以前はプレミアム以上のグレードでは運転席と助手席の背面に装着されたが、改良後は助手席の背面のみになって運転席は廃止された。さらに以前のプレミアムとプレミアムツアラーには、抗菌タイプのアレルクリーンシートが装着されたが、これも省かれている。
以上のようにN-ONEは、改良を受けて複数の装備を廃止しており、価格に換算すると1万5000円から2万円の値上げになった。
単純な値上げなら正直だが、装備を省いたことが購入後に分かると、ユーザーは損した気分になる。特に従来型から改良後の新しいタイプに乗り替えた時、運転席シートバックポケットが省かれていると、以前とは車内の整理の仕方が変わってしまう。
このような装備のカットは実は今に始まった話ではなく、以前から6個のスピーカーを4個に減らす、メッキパーツを省くといった変更が行われてきた。
販売店では「本来付いているべき装備がなくなると、お客様はメーカーから裏切られた気分になって満足度も大きく下がる」という。
原材料費や輸送費が高騰しているのに競争が激しく値上げできないと、装備を省きたくなる気持ちも理解できるが、顧客の気分はさらに大きく害されてしまう。何事も正直に対処することが大切だ。
コメント
コメントの使い方価格を抑えるためや納期の長期化を防ぐために装備を省くのは理解出来る。
しかしその場合、省いた装備をオプションで付けられるようにして欲しい。なかなか難しいだろうけど…
本当はマイチェンで車が熟成されるのを待ちたいところだけど、今後はマイチェンや年次改良前に買った方が良いのかなぁ…
売れていなくて余力が無いメーカーから値上げ。