なんでバスの車名は記号だらけ!? あの暗号の意味ってなに?

なんでバスの車名は記号だらけ!? あの暗号の意味ってなに?

 普通乗用車は「プリウス」や「アルファード」のような車種名・商品名で呼ぶのが一般的だが、これがバス車両となると状況が一変する。アルファベットと数字記号を羅列した、何やら呪文のような言い方をするのだ。それはなぜなのだろうか?

文・写真:中山修一

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仕方なく呪文を選んだ?

 LNG-HU8JMGP、BJG-HU8JMFP、KC-RU1JMCH……これらは全て、特定のバス車両を表している。バス趣味人なら、メーカー名+英数字記号+年式(順不同)で、そのバスが何者であるのかを判別するのがポピュラーだ。

 実はバスファンでも頭が痛くなるほど難しいトピックだったりするのだが、この英数字記号の正体はバスのメーカーが付けた車両の型式である。

越後交通の1988年式日野P-HT235B。年式が古い大抵のバス車両は型式が名前代わりになっている
越後交通の1988年式日野P-HT235B。年式が古い大抵のバス車両は型式が名前代わりになっている

 型式は大抵の自動車に付けられており、例えばトヨタ アルファードの3.5L 2WDエグゼクティブ・ラウンジ仕様は3BA-GGH30W-PFZVK、日産ノートe-Power Xの2WD車ならHR12DE-EM57といった具合だ。

 普通乗用車は愛称や商品名のほうが優先されるため、型式で呼ばれる機会は少ない。それに対してバスの場合、特に古い時代まで遡ると、多くの車種で愛称自体が用意されていなかったのだ。

 商品としてのバス車両はあくまで業務用。個人向けのような親しみやすいキャッチーな名称を付ける必要がなかったとも考えられる。

 「日野ブルーリボン」のように、古くから愛称を持った車種もあるにはあるが、年式の古いものはあまりブルーリボンとは言わず、やはり呪文のほうが優先される。

 というのも、かつてのバスはシャシーとボディをそれぞれ別々のメーカーで作るのが主流で、シャシーが同じでもボディメーカーが異なると外観が全く変わってしまい、ひとつの愛称では区別が付け辛かった事情がある。

 そのため、複雑になってしまうのは仕方ないものの、型式をそのまま名前にするのが確実な方法だったというわけだ。

製造工程の変化でカジュアルに?

 複雑な英数字記号の組み合わせで車種を表すバス車両も、最近は車種名・商品名がしっかり付けられ、普通乗用車と同じ要領で型式よりも車種名のほうが前面に出始めている。

 これにはバスの製造工程が深く関係していて、昨今はシャシーとボディを同じメーカーで作るため、ひとつの車種名でも区別が付けやすくなったのだ。

 最近の車種を見てみると、各メーカーで工夫を凝らした様々な名称を車両に冠している。

【日野自動車】
大型路線車:ブルーリボン
中型路線車:レインボー
小型路線車:ポンチョ
大型高速・貸切車:セレガ

【いすゞ】
大型路線車:エルガ
中型路線車:エルガミオ
大型高速・貸切車:ガーラ

【三菱ふそう】
大型路線車:エアロスター
大型高速・貸切車:エアロクイーン/エアロエース
小型バス:ローザ

 上記の車種にも型式はあり、例えば日野ブルーリボンの10.4m・AMT車は2TG-KV290N3、いすゞエルガの10.4m・AT車なら2RG-LV290N3、三菱ふそうエアロスターの10.7m・ノンステップAT車が2PG-MP38FKFVとなる。

横浜市営バスのいすゞエルガ(型式2PG-LV290N3)。最近の車両は車種名でも呼びやすくなった
横浜市営バスのいすゞエルガ(型式2PG-LV290N3)。最近の車両は車種名でも呼びやすくなった

 バス車両は同じ車種でもバリエーションが多々あるため、細かく分けたい場合や過去のバス車両と書式を共通にしたい時などは、今も車種名ではなく型式を使って表現する方法が好まれる。

 これまでに記してきた型式は、どちらかと言えば書き言葉の性質が強く、口頭なら肩肘張らずアバウトで良い。むしろバスファンの中でも型式をソラで言えるとなれば、筋金を超え鉄骨が入るほどの大御所クラスだ。

 もちろん、本来のバス趣味はもっと気軽に付き合えるもの。型式を知らなくても十分楽しめるのでご安心を!!

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