■SUV人気もハスラーを後押し
このあたりをスズキの販売店に尋ねると以下のように返答された。「ハスラーは先代型の販売が好調だったから、現行型に乗り替えるお客様も多い。またスズキには古くからジムニーがあり、SUVのイメージも強い。今ではスペーシアギアも加わり、その傾向が一層強まった。納期は約5か月だ」。
ハスラーとスペーシアギアは、両方ともSUVの雰囲気を備えた背の高い軽自動車だ。スズキ車同士で競争することもあるが、相乗効果により、スズキのSUV的なブランドイメージを強固にしている面もある。
ダイハツの販売店では、タフトの売れ行きについて以下のように説明した。「タフトは背の高い軽自動車だが、ファミリーよりも2名で乗車するお客様の間で人気が高い。スカイフィールトップなど、独自の装備が魅力となっている。納期は約3か月だ」
タフトは前述の通り、シートアレンジがシンプルで、背の高い軽自動車なのに後席を荷室として使うようにデザインされている。車内の色彩も、前席側はブラックで後席側はグレーだ。
上級のGとGターボでは、前席側に装着されるドアのインナーハンドルはメッキ仕上げだが、後席側はブラックになる。車内の後部は荷室と割り切った。
このような造りだから、タフトはファミリーよりも、2名以内で乗車するユーザーが多い。そしてスカイフィールトップが欲しいユーザーは、全車に割安に標準装着されてメリットになるが、不要なユーザーにとってはムダが生じて欠点にもなり得る。
タフトはハスラーと違って従来型からの乗り替え需要が限られ、なおかつユーザーを絞り込んだクルマ造りをしているから、売れ行きが伸びない面もある。
■ダイハツとスズキの車種構成の違い
タフトがユーザーニーズを絞り込んだ背景には、ダイハツとスズキの車種構成の違いがある。スズキの背の高い軽乗用車は、悪路向けSUVのジムニーと商用バンから派生したエブリイワゴンを除けば、スペーシア、ワゴンR、ワゴンRスマイル、ハスラーの4車種だ。2021年にワゴンRスマイルが加わる前は3車種だった。
ところがダイハツは、タント、ムーヴ、ムーヴキャンバス、タフト、キャストがあり、以前はウェイクも用意されて6車種をそろえていた。ダイハツは車種を増やしてユーザーニーズをカバーする戦略だから、基本的に絞り込んだ商品開発をする傾向が強い。
例えばムーヴキャンバスも、初代モデルは同居する母親と娘が使うことを前提に、後席下側の「置きラクボックス」を考案した。その後追い的な商品とされるワゴンRスマイルは、車内がスペーシアに近い普通の造りで、ムーヴキャンバスのような絞り込んだ個性はない。
同様のことはタントにも見られる。左側のピラー(柱)はスライドドアに内蔵され、ドアを前後ともに開くと開口幅がワイドに広がる。
現行型はこの特徴を生かして、売れ筋グレードの運転席に、540mmのロングスライド機能を標準装着した。運転席を予め後方へスライドさせておくと、子育て世代のユーザーが左側のワイドなドアからベビーカーを抱えて乗り込み、子供を後席のチャイルドシートに座らせた後、降車しないで運転席まで移動できる。
つまりドライバーが運転席側のドアではなく、左側のスライドドアから乗り降りする導線に配慮して開発した。
しかし2022年10月のマイナーチェンジでは、運転席のロングスライド機能が、標準装着から2万2000円のオプション装備に変更されている。開発者に理由を尋ねると「使用頻度が高くないから」であった。コストの低減もあるが、ダイハツの装備には、少々「考えすぎ」の傾向も見られる。
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以上のようなダイハツとスズキの商品開発の違いに基づいて、タフトとハスラーは開発された。今のところ売れ行きはハスラーが多いが、今後時間を経過すれば、販売順位が入れ替わる可能性もある。
ダイハツは軽自動車の販売1位メーカーで、以前は軽乗用車、軽商用車ともにダイハツがスズキよりも多かった。
しかし今は状況が変わった。軽商用車はダイハツだが、軽乗用車はスズキの届け出台数が多い。タントの売れ行きが伸び悩み、軽乗用車の販売では、ダイハツは2位に下がった。これを挽回するためにも、ダイハツはこれから、タフトなど軽乗用車の販売テコ入れを積極的に行う。
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コメント
コメントの使い方タフトのインテリア写真がロッキーな気がするんですが。。