「効果は1%」ってマジか…新型クラウンにもあるボディ各所についた「フィン」の効能

流れの剥離を抑制

 F1に限らず、一般の市販車でも、空力性能は燃費や性能を左右する重要なアイテムです。空気抵抗は、車速の2乗に比例するので、80km/hを超えるような高速走行では、特に空気抵抗の影響が顕著になるため、この空気抵抗を減らすことが、高速燃費や高速性能の向上につながるのです。

 クルマが走行するとき、流れてきた空気が、ボディの凹凸部で剥離することで渦が生成されます。この渦によって、空気とボディ表面に摩擦力や圧力低下が起こり、進行を妨げる方向の空気抵抗が発生します。また、車体後部には後流渦が発生すると、その領域の圧力が低下、そうなると、クルマを後方に引っ張る力として働くので、これも空気抵抗になります。

 このように空気抵抗が増えやすい場所に、フィンのような突起を設置することで、流れが剥離する直前で縦渦となり、これによって剥離点が下流側に移動し、剥離点の流速が遅くなって、表面付近の圧力が上昇して空気抵抗が軽減するのです。このエアロスタビライジングフィンの採用により、燃費の改善のほか、燃費の改善や走行安定性の向上、風切り音の軽減なども期待できます。

燃費向上効果は1%程度

 では、その効果はどのくらいあるのでしょうか。運転条件やクルマの種類等によって効果が異なるので、定量的な効果は明らかにされていませんが、ここでは、燃費向上効果を推算してみます。

 平均的な乗用車における全走行抵抗消費仕事のうち、空気抵抗の占める割合は市街地走行で10%~20%とされています。これは、空気抵抗が10%低減すると、燃費が1%~2%低減することを意味します。また他社の事例ですが、セダンでルーフ後端にボルテックスジェネレーターを装着した場合に、空気抵抗係数Cdが約2%低減したという結果があります。

 これらのことから、ルーフに付けたボルテックスジェネレーターを装着することによる燃費低減効果は、0.2%~0.4%と推算できます。しかしこれは車速が低い場合。100km/h超えるような高速走行では走行抵抗の占める割合が40%程度まで上がるので、燃費低減効果は0.8%程度まで向上すると予想されます。

 大まかな推測ですが、いずれにせよエアロスタビライジングフィンでは、1%以上の燃費改善は見込めません。燃費が20km/Lならば20.2km/Lに改善する、ということです。しかし、燃費は1%向上させるためにも必死に開発研究をするものであり、小さいながらも確実に燃費が向上するエアロスタビライジングフィンは、効果的な燃費向上アイテムのひとつなのです。

後付けだと効果は限定的

 エアロスタビライジングフィンは、テールランプのボディサイドやサイドミラーといった樹脂部品の一部として成形されていますが、カーショップでは同様のフィンを主に「エアロフィン」という名称で販売しています。しかし、後付けでは効果は限定的、もしくは悪化もありうると考えられます。

 自動車メーカーは、ボディ形状に限らず、エアロパーツの形状や装着場所などについて、シミュレーションや風洞試験(試験室内に実車相当の空気の流れを作ってクルマのボディ周辺の流れを計測する試験)によって最適化を図っています。ユーザーが後付けで取り付ける場合も、説明書に従って取り付ければ、ある程度の効果は出せるかもしれませんが、車種によって形状や取り付け場所は異なり、また下手をすると、後流渦を余計に引き起こす可能性もあります。後付けの効果は限定的だと考えたほうがよいでしょう。

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 エアロスタビライジングフィンは、小さなパーツで効果も実感しにくいので、その効果について懐疑的な見方もありました。しかし、トヨタは費用対効果など総合的に判断しており、また、現在ほぼすべての車種に展開していることから、その効果はお墨付きだといえます。たとえ小さな効果であっても、チリも積もればという精神で、積極的に採用しているのでしょう。

【画像ギャラリー】小さいけど確実に効果がある!! 「エアロスタビライジングフィン」のある代表的なトヨタ車(21枚)画像ギャラリー

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