日本でステアリングを握るならどちらが良い?
レクサスは、引き締められたサスペンションに剛性の高いボディが大きな特徴だ。高速域でのクルージングは気持ちよく、ステアリング操作に対してクイックにクルマが反応し、意のままに操縦している感じが強い。
ただ、一般道では敏感すぎる操作性が疲労感を与えることもある。ステアリング操作に手ごたえを出すため、重めのステアフィールにしていることも相まって、街中をスイスイと移動するクルマではないことが分かってくる。
クラウンに関しては、国際基準を意識したとはいえ、まだまだ日本の道路環境に軸足を置いている。先代のニュル仕込みの足回りはスマートに変化し、14代目クラウン以前の運転感覚に戻ったように感じた。
スッと発進し、街角を軽快に曲がっていく。ステアリング操作に無駄な力は必要なく、体格や腕力の差があっても、どんな人でも楽に操作できるのがクラウンだ。クルマの動き方や音の抑え方など、ステアリングを握っていて日本人が「質が良い」と感じるのは、レクサスよりもクラウンなのではないかと筆者は思う。
全幅1800mmという不文律は超えてしまったが、クラウンは日本の道を知り尽くし、日本のために考えて作られているということを、運転席では強く感じる。
ショーファーカーとして使えるか? 後席の乗り心地は大きく差が出た
ドライバーズカーであり、ショーファーカーでもあるのがクラウンの立ち位置。後席の居住性や乗り心地のクオリティにも注目が集まる。
レクサスに関してはLSやLXを除いて、ショーファーカーとしての素性が高いクルマは、それほどない。ISやNXに関しては、乗り心地が硬めであり、圧倒的に運転席や助手席にいる方が快適で、後部座席に好んで乗りたくはないからだ。
クラウンクロスオーバーに関しては、「クラウンらしさ」が戻ってきた。発進時にはリアサスペンションがグッと沈み込み、一拍遅れて自分の体が動いていく。一瞬、ゆりかごの中にいるようなフワッとした感覚は、滑らかでスムーズ。クラウンだけの特別な感覚だ。
路面のアンジュレーションに対する揺れの収め方は、クルマそれぞれに個性が出る。最近ではレクサスLSのように、ビタっと衝撃をねじ伏せて、揺れている時間を極端に短くするものが多いなか、クラウンは、ドンという衝撃を与えずにボディを揺らして緩衝している。
日本でショーファードリブンを目的にする人には、クラウンのセッティングが好まれるだろう。突き上げを感じにくく、クラウンクロスオーバーの質は高い。
ただし、SUVという居住空間にゆとりが出るボディパッケージでありながら、身長177cmの筆者にとってクラウンクロスオーバーの後席は少々狭かった。ゆえに後席の質に関しては、どちらが上と断言できない部分が多い。好みの乗り心地や乗員の体格によって、質の高さを感じるポイントは変わってくるだろう。
インテリアに関しては、インパネのプラスチック感がチープに感じるクラウン。もう少ししっとりとした肌触りが欲しい。こうした点は、レクサスの方が一枚上手だ。
●ブランド価値が並んだところで再検証したい
グローバル展開するクラウンでも、日本人の心は忘れていないようだ。日本的な行儀の良さが感じられ、それを質の高さと呼ぶのなら、レクサスに追いつき追い越した感じもある。国内使用に限定すれば、レクサスよりもクオリティが高いと感じる部分も多い。
ただし、全体的な印象としては、価格以上の価値を感じにくい。クルマのクオリティ以上に、クラウンとレクサスの間には、ブランドクオリティの差が大きく存在する。
今後、国際的に「クラウン」というブランドが浸透し、ブランド価値が並んだところで、改めてレクサスとクラウンを比較するのも面白いだろう。
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