2018年10月4日、トヨタとソフトバンクが戦略的提携を行うと発表した。
日本の株式時価総額1位(トヨタ)と2位(ソフトバンク)の会社の提携話だけに、テレビや新聞もこの話題を大々的に報じたが、この提携によって生まれたのが「モネ・テクノロジーズ」という会社。
今回はこのモネ・テクノロジーズという会社がいったいなにをしようとしているのか、考えてみよう。
※本稿は2018年11月のものです。※メインの写真は10月4日の記念撮影。左から宮川潤一ソフトバンク副社長(モネ社社長)、孫正義ソフトバンクグループ会長、豊田章男トヨタ社長、友山茂樹トヨタ副社長
文・写真:ベストカー編集部
初出:『ベストカー』 2018年12月10日号
■MaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)に向けて準備を進めるトヨタ
モネ社のことを話す前に、ここ数年のトヨタの動きを振り返っておきたい。
2016年1月、トヨタはアメリカ・シリコンバレーに「トヨタリサーチインスティテュート(TRI)」を設立し、人工知能の研究に乗り出した。
続いて同年4月、クルマの新たな価値として「つながる」ことに注目し、マイクロソフトと共同でアメリカに「トヨタ・コネクティッド」という会社を設立する。
さらに9カ月後の2016年10月、今度は「モビリティサービス・プラットフォーム(MSPF)」という新たな考えを発表した。
MSPFを簡単にいえば、「クルマを使ってさまざまなサービスを行う業者のために便利な枠組みを作りますよ」というもの。一例として、いちいち鍵を受け渡さなくてもスマホでクルマの施錠・解錠、始動などができるスマートキーボックスというデバイスも発表された。
そして大きな話題となったのが、今年1月にラスベガスで開かれたCESだ。ここでは豊田章男社長が「トヨタはモビリティカンパニーになる」と宣言し、既存の自動車ビジネスから軸足を移していくことを明らかにした。
その具体例として発表されたのが「eパレット」だ。eパレットをひと言でいえば、自動運転や電動化技術、コネクティビティなどが詰まった無人の移動モジュール。
移動オフィスや市内循環バス、物流コンテナといった多目的に使える汎用性を持っているのだが、この乗り物を都市のインフラに組み込むことで、これまで実現できなかった新しいモビリティ(最近はこれを「MaaS=モビリティ・アズ・ア・サービス」と呼ぶ)を生み出そうというのだ。
■プラットフォーマーと利用者をつなぐ連結点
前置きが長くなったが、今回紹介するモネ・テクノロジーズは、ここまで説明してきたトヨタのモビリティ戦略をビジネス化するうえで、ハブ(連結点)となる会社だ。
今後、新たなモビリティサービスが始まると、そこにはこれまでトヨタが得意先としてこなかった新しい事業者が次々に含まれてくる。過疎地での移動に悩む自治体であったり、人手不足に悩む物流業者であったりとさまざまだ。
トヨタはeパレットを作ったり、それを運用する技術的枠組みを作ることはできるが、それを、そういった個々の事業者に向けて提案したり、カスタマイズしたりするノウハウを持っていない。そのノウハウを手に入れることこそが、今回ソフトバンクと手を組んだ最大の理由と考えていいだろう。
ソフトバンクはこれまで、ADSLや携帯電話といった分野で直接顧客と向きあい、知見を積み重ねてきた。国が厳しい規制を敷いている領域に果敢に働きかけ、その規制を打ち破ってきた経験もある。
トヨタは、こうしたソフトバンクの力を借りて、新たなモビリティサービスをビジネスの軌道に乗せるつもりだ。モネ・テクノロジーズはトヨタの作るハードウェアをベースに、さまざまな事業者と向きあい、彼らに最適な事業モデルを提案する役割を担う。
もちろんソフトバンク側にも旨味はあって、このサービスから得られる膨大な人流・物流データを、自社のAI開発などに生かすことができる。
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