e-POWERは失速!? まだアクアが売れる理由は!? 2018年の販売台数ランキングを振り返る

e-POWERは失速!? まだアクアが売れる理由は!? 2018年の販売台数ランキングを振り返る

 2019年が始まりまだ数時間、今年の自動車市場を賑わせるクルマはどんなものだろう? そんな新年に2018年の販売台数をざっくり振り返るのがこの企画。

 「日産ノートが強い」なんて印象をCMなどを通じると感じるものの、実際にデータを分析してみると現状はすこし異なるようだ。

 販売台数と燃費には人一倍厳しい、若手自動車ライター永田恵一氏が徹底分析。実は強かったのはトヨタのアクアだった!?

文:永田恵一/写真:日産、トヨタ


■2018年はノートが勝利か!? 大健闘のアクアが目立つ

 「平成最後の」という言葉があちこちで聞かれた2018年が終わり2019年がスタートした。2018年販売台数ランキングは2019年の元旦現在、2018年11月までの分しか発表されていない。

 しかし現状で2018年の振り返りをしてほしいとのことなので、1~11月のデータを詳しく見ていこう。登録車の販売台数を見ると、e-POWER効果で大人気となった日産ノートの大躍進に加えトヨタアクアの大健闘も目立つ結果となった。

日産にとってはノートの年間販売台数1位(予定)は明るいニュースになりそうだ。e-POWERの技術は真新しいものではないが、新鮮な運転感覚とPRの勝利といったところだ

 そこで当記事の後半ではモデル末期となっているアクアが、なぜ未だにこんなに売れるのかを考察してみた。

 その前に2018年11月までの2018年の年間登録車販売台数ベスト10を集計する。

1位 日産ノート 12万8217台(ガソリン車4万2792台、e-POWER8万5425台)
2位 トヨタアクア 11万7511台
3位 トヨタプリウス 10万8500台
4位 日産セレナ 9万3952台
5位 トヨタシエンタ 8万5020台
6位 ホンダフィット 8万4350台
7位 トヨタヴォクシー 8万4270台
8位 トヨタカローラ 8万2800台
9位 トヨタルーミー 7万9875台
10位 トヨタヴィッツ 7万9750台

 ここ数年同様、コンパクトカー、ハイブリッドカー(ベスト10でハイブリッドがないのはルーミーだけだ)、ミニバンが占め、路上でよく見るクルマと同じ傾向となった。

 また11月時点で1位のノートが2位のアクアに1万台以上の差を付けているため、2018年の登録車販売台数では11月以降日産社内のゴーンショックの影響はあるにせよ、ノートの1位が確実となっている。

 日産車が登録車の年間販売台数トップになったことは1968年に統計が始まって以来なく、2019年の1月半ばには快挙のニュースが流れるだろう。

■それにしてもなぜアクアが売れ続けるのか?

 ノートの快進撃はゴーンショックで揺れる日産にとって明るいニュースなのに加え、もう1つ注目したいのは単独車種の販売台数を見た点。

 例えばベストカー本誌に掲載される販売台数のように、ノートであればガソリン車とe-POWERを別に見た車種別集計では少し異変を感じることもできる。

 それは前述のベスト10を見ていただくと分かる通り、アクアが2018年11月までで一番売れたクルマになっているという点だ。

2011年に登場したアクア。初期型から圧倒的な燃費、そして「トヨタのコンパクト」として使いやすいボディメイクが非常に多くの支持を受けた

 ここ数年に登場した新型車ならまだしもアクアは2011年12月に登場しており、ヴィッツベースのハイブリッド専用のコンパクトだ。

 アクアは発売から約1カ月で先代プリウスほどではないにせよ、月間販売目標台数1万2000台の10倍となる約12万台という受注を集め、大人気車となった。

 筆者の実家には2012年12月登録のアクアの初期モデルがあり、実家に帰った際にはよく乗っており自動車メディアではアクアに詳しい方だと思う。

 クルマ好きの視点でアクアの印象をまとめると「細かいことを言い出すと不満も多々あり、特に安くもなく全体的に普通」といったところである。

 ではクルマ好きではなく普通にクルマを使う、買う人の視点で登場から満7年となるアクアが未だに売れるのかを考えてみたい。

1.いい意味で万人向けでクセのないスタイルをしている。

2.リッター20kmが確実な燃費は、日常的にクルマを使う人や古いクルマから乗り換えた人から見れば未だに強烈なパンチがある。

3.カラーを含めた内外装の変更、GRなどバリエーションの拡充、被害軽減ブレーキの搭載や燃費の向上、最近では「踏み間違い加速抑制システム」などのアップデートが未だに頻繁に実施されている

4.アクアはトヨタ自動車東日本の岩手工場で生産されている。これは筆者のかなり強い私見であるが、「復興の支援になれば」という気持ちでアクアを買う人も少なからずいるのかもしれない

5.日産とホンダのディーラーが日本に2000店程度なのに対し、アクアはトヨタ全ディーラー扱いなので約5000店の店舗で売っており、全国どこでも買えて直せるという絶大な安心感がある

6.トヨタの万人向けのコンパクトカーという実に無難なクルマなのに加え、ハイブリッドカーに初めて触れる人にとっては未だに新鮮に映る

 といったことが浮かぶ。そこに日本人のモノの選び方でよくある「多くの人が持っているものなら間違いないだろう」という心理が働くと、アクアのように売れている商品はもっと売れる。

 つまりアクアが未だに売れているのもクルマが基本的には大衆商品なのを考えればよく分かる。

アクアはモデル末期だがクロスオーバーを追加するなど時代の要求に細かく応えているともいえる

 またアクアは登録車の車名を合計した販売台数では2016年2位、2017年3位から、2018年は11月までで単独1位と巻き返しており、その理由も考えてみる。

1. 2016年は2015年12月登場の現行プリウス、2017年は2016年11月登場のノートe-POWER、2016年12月登場のC-HRという量販車の販売の本格スタートがあった。

 そのため新車効果のある3台が躍進したが、2018年になるとさすがに3台の新車効果も薄れ、販売も落ち着いた。そうなれば無難なクルマであり、絶対的な価格も安いアクアの販売は相対的に盛り返す。

2.アクアが登場した頃はアクアのトップグレードが185万円、先代プリウスのベーシックグレードが217万円だった。

 装備内容や広さなどを含めた車格といった実質的な差額も考えると「プリウスを買った方がいいのでは?」という議論もあった。

 しかし現在は同じ見方で50万円もの差額がある上に、現行プリウスがクセのあるスタイルをしているのもあり、結果的に両車の棲み分けが明確になったこともアクアにとっては追い風になった。

 いずれにしてもアクアは、少なくとも日本市場では大成功を納めた。アクアは2019年後半にフルモデルチェンジされると言われている。

 これだけ売れたクルマだけにクルマ好き視点で不満のある各部の質感を上げながら、全体的に無難なフルモデルチェンジをすることが非常に重要なのではないかと思う。2019年が楽しみだ。

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