■走行性能と乗り心地の比較はいかに?
走り出すと両モデルの違いはいっそう明らかになってくる。BMWの6気筒エンジンと8速オートマチックは快適でバランスが取れており、操舵力、ギア比、そして路面からのフィードバックは非常に自然であった。
いっぽう、アウディの直列5気筒ターボは、BMW伝統のシルキーシックスには及ばないまでもスムーズでトルクフルなパフォーマンスを発揮してくれた。また、アイコニックなサウンドと独特なバイブレーションは玄人には垂涎ものだ。
しかも、テスト後のオンボード燃費チェックでBMWよりもわずかながらいい結果が示されていた。また、ステアフィールはBMWに勝るとも劣らないが、全体的にやや軽すぎで路面情報はわずかにフィルターがかかっているような感じが残った。
両モデルともに4WDが装備されているが、操縦&駆動特性はアウディのほうが全体的に安定感は高かった。さらに、コーナーでは新たに採用されたトルクスプリッターのおかげで必要に応じて各後輪にトルクが適正に伝わり、スポーツ走行では思い切ってスロットルを踏んでも安定した姿勢でクイックな脱出が可能だった。
一方、BMWは4WDではあるが、後輪駆動のキャラクターが大きく残されており、コーナーでスロットルを踏み込むと後輪が外側に出ようとする。
しかし、最後までコントローラブルでBMWのスローガンどおり、「駆け抜ける歓び」を楽しめる。また、ブレーキは例えウェットな状況でも確かなペダルフィール、そして制動コントロール性ともに明らかにBMWのほうがよかった。
アウディRS3とBMW M240ixDriveの最高出力はわずか26psの差であったが、トルクスプリッターに代表される最新のシャシー技術、そして数々のドライブモードを与えられたRS3セダンのスポーツ性はハイパーコンパクトにふさわしいものだった。
しかし、これらはもともとFF特性をFR風に演出するためのもので、楽しむにはちょっと頭とスキルが必要だ。さらに、そのほとんどはクローズドサーキットで本領を発揮するもので日常のドライブではほとんど試すチャンスはない。
ゆえに4ドアの持つ実用性と快適性をウィークデイで発揮、そして週末にはスポーツ走行を楽しみたいと思うドライバーにお薦めする。また、アウディ最後のRSモデルという意味でも価値ある存在になるに違いない。
いっぽう、BMWはもとよりFRなので動きは自然で、肩の凝らないスポーツドライブを楽しむことができる。さらに2ドアを自分のパーソナルなライフスタイルの象徴として隠れたぜいたくを楽しめる。
同時にダイナミック・パフォーマンスは日常ドライブには必要にして充分だ。加えてアウディよりも60万円安い価格も魅力的だ。
それでも満足しないBMWファンにはあと登場したばかりのM2(G87型)しかない。最高出力460psを後輪で駆動するM社のアイコニックなスポーツセダンは間違いなく最高の「お気に入り」になるに違いない。
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