センセーションを巻き起こしたテスラの大型電気トラックはこの5年で何が変わったのか!? テスラ・セミのデリバリーイベントより【前編】

変わったこと、変わらないこと

 相次ぐ延期の間、テスラはセミの問題を見つけるために、自社輸送でセミを使ってきたという。公式サイトによると、航続距離は300~500マイル(483~805km)で、航続距離の違いは搭載するバッテリーによるものだ。

 セミの細かいスペックなどはイベントでも語られなかったので、詳細は不明だ(ペプシコなどでの実運用を通じて量産化に向けたさらなる改善を行なうのだろう)。とはいえ、5年前の発表時と比較すると、変わった部分も変わらない部分もある。

 変わらない部分で言うと、まずは500マイル(805km)という航続距離だ。5年前は最も現実的ではない部分でもあったが、納車を済ませた実車でもこの航続距離を確保した。テスラは実際に500マイルをフル積載で走行する動画も併せて公開している。

 そのためにはバッテリーの性能向上が不可欠で、新型のバッテリーセルによるところも大きいだろう。

 自動運転・オートパイロットについてはイベントでは一切言及がなかったが、次世代の乗用車用と同じハードウェアが搭載されるとみられる。

 発表時は2台の内1台が小型のデジタルミラー(カメラ)を装備していが、デジタルではない通常のミラーに変わっている。これは新車販売時のアメリカの法規対応のためと思われる。米国運輸省道路交通安全局(NHTSA)のいまの保安基準ではデジタルミラーは使用禁止(装着不可)となっているからだ。

 ただし500マイルを走ったテストランの車内映像では、デジタルミラーの映像が左右のLCDに表示されているので、試験は実施している模様で、法規が許せばいつでもデジタル化が可能のようだ。

キャブと総重量、そしてコスト

 そのほか、空気抵抗係数(Cd値)の低減を図ったというキャブデザインに大きな変更は見られない。大きく曲がったウィンドシールドから、細いAピラー、サイドガラスへと流れて行くデザインも同じで、運転席はキャブの中央に配置する。

 ワイパーは1本のパンタグラフ・アーム式、キャブへ乗り降りするためのドアは運転席より後方にある。

 電動モーターは大型車のディーゼルエンジンよりはるかに小さいため、キャブの低床化など車両レイアウトの自由度が高いとされる(逆にバッテリーの分、重量は増える)。セミのモーターは1基当たりサッカーボール大の大きさだという。

 とはいえ、大型トラックにボンネットキャブを採用するアメリカでは、キャブオーバー式の日本や欧州とは異なり、キャブ下にエンジンがないため床面はもともと低い。キャブ内を立って歩けるのはBEVの恩恵ではなく、アメリカントラックでは割と普通のことだ。

 連結総重量(GCW)は82000ポンド(37.2トン)で、2000ポンド増えている。アメリカではセミトレーラのGCWは80000ポンド(36.3トン)が制限値だが、ゼロ・エミッショントラックに2000ポンド(約900kg)の重量の緩和が認められたためだ。

 ちなみに欧州は最大2トンの緩和を認めており、バッテリー重量による積載量の減少を相殺している。

 なお、予約は既に終了しているが、発表時の価格は18万ドルとされていた(航続距離500マイルバージョン)。当時の為替レートで約2000万円(円安が進んだ今のレートだと2500万円ほど)で、アメリカントラックとしては高額だった。

 ただ最近の急激なインフレを考えると、次の予約からは相応の値上げが必要になるだろう。テスラはセミの車両寿命を通じて、燃料代やメンテナンスコストなどを合計して約20万ドルのコスト節減効果があるとする。商用車は生産財であり、ユーザーのコスト意識は乗用車よりはるかに厳しい。


 テスラ・セミのデリバリーイベントより【後編】では、発表時とは大きく変わった駆動方式や、他社との競争を展望する。

【画像ギャラリー】2017年(発表当時)と2022年のテスラ・セミを画像でチェック!(7枚)画像ギャラリー

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