ホンダの新規セダン連続投入にある勝算  セダン不況なのになぜ!?

■1970年代後半からホンダのセダン戦略が本格化

やがて1978年、ハッチバックのみだった「アコード」にも独立したトランクを付けたセダンを加えた。

さらに同車のモデルチェンジの際に姉妹車の「ビガー」を追加。1985年には、フラッグシップとして初代「レジェンド」を発売。

ほどなく一方で、「クイントインテグラ」や「コンチェルト」など小型のセダンもラインアップに据えた。

セダンでもさまざまなサイズの車種のラインアップを開始したホンダ。写真のクイントインテグラもその代表車種だ

ホンダのセダンが世の中でがぜん存在感を増すのはこのあたりからだ。5気筒エンジンを縦置きしたFFフロントミッドシップによる初代「インスパイア」=3代目「ビガー」はかなりのヒット作となった。

メカニズムだけでなく洗練されたデザインを持つ独特の雰囲気を持った、なかなか攻めたセダンであり、当時、売れまくっていたトヨタのマークⅡ三兄弟や人気の高かった日産勢に対しても一矢報いる存在となった。

オーソドックスなアコード系の一連のモデルもそれなりに売れた。

ただし、ほどなく同じ形をしたいろいろな車名のクルマが入り乱れて、どのモデルがどれの後継で、どれとどれが姉妹車なのかが名前を聞いても即座にわからないような状況に陥る。一代限りで消滅した車名も多い。

そんな混沌とした状況も、折からのセダン人気の低迷もあって徐々に整理されていったわけだが、販売台数は落ちてもユーザーにとって最適な商品を提供すべくラインアップを極力減らさなかったあたりがホンダらしい。

前記のコメントにも通じるが、おそらくそれはホンダにとってはごく自然なことなのだろう。

数の話はそんな感じだが、デザインについて少し触れておきたい。というのは、最近のホンダのセダンが、やけにCピラーを寝かせたデザインばかりになったように感じていたからだ。

ただし、アキュラ車は事情が異なり、フラッグシップのRLX=レジェンドもそうだが、北米仕様の現行アコードがほぼ一直線を描くファストバックとなっているのに対し、そのアキュラ版のTLXは若干ノッチバックになっている。

TLXのCピラーは写真のようにかなり太い。ホンダのセダンへの思惑はなかなか深いところにありそうだ

クーペライクなフォルムのセダンが増えているのはホンダに限った話ではなく、世界的にその潮流があることは事実だ。

とはいえ少なからずセダンらしさも残そうという意図が見て取れるのものが多いのに対し、ホンダのセダンはそれがない。

むしろセダンっぽさを払拭することをヨシとしたように見受けられる気がしていたので、その理由をセダンの主戦場である北米のホンダの関係者に尋ねてみた。

すると、いわゆる昔からある普通のセダンではユーザーに受け入れられにくい時代になり、セダンの価値の再構築を図る過程で、こうしたスタイルが生まれてきたという、マーケティング上の考えによるものとの返答をいただいた。

選択肢の多様化した現代において、広さやファミリーカーとしての機能性を求めるユーザーの多くがミニバンやSUVを選択するようになったのに対し、セダンのプレゼンスを光らせるためには、持ち前の運動性能、スポーツ性をこれまで以上に際立たせる必要がある。

そこでCピラーを寝かせてクーペテイストにすることにより、後席ヘッドクリアランスを多少犠牲にしても、斬新でスポーツライクなスタイルを優先した結果だという。なるほどホンダのセダンは今でも攻めつづけているわけだ。


【編集部まとめ】

ホンダのセダンが今もチャレンジしているのはわかったが、どうしてもそれは北米市場偏重の結果であり、そのついでに日本市場でも売ってます、というイメージを受けてしまう。

第一に同クラスのSUVやミニバンに比べると割高に感じる。台数が見込めないのだから仕方ないのだけど(逆に軽やSUVは売れるからこそ割安な価格で用意できるのだろうけど)、実際乗るとシビックもグレイスもすごくいいクルマだし応援したい。

わがままな願いだとは承知で、いま一度、「割安な価格にすれば売れるはず!」という狙いをもって、戦略的な価格で(日本市場において)カッコよくて走りのいいセダンで勝負を仕掛けてほしい。

そういうことができるところがホンダの強みだったはずだ。

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