去る2018年10月19日、富士スピードウェイでちょっと奇妙な試乗会が開かれた。主催したのは、日本では聞いたこともない新興クルマブランド。試乗させたクルマも、日本発売が決定してもいない4ドアセダンなのである。
そんなヘンテコな試乗会の主催者こそが、今回紹介する「Lynk&Co(リンク・アンド・コー。以下、L&C)」。しかしこのL&C、中国自動車大手の吉利(ジーリー)とボルボが共同出資したコネクテッドカーブランドと聞けば、なにやら放っておけない気配が漂ってくる。早速、ポテンシャルを分析してみよう。
※本稿は2018年11月のものです
文・写真:ベストカー編集部
初出:『ベストカー』 2018年12月26日号
■ボルボの土台の上に新しい価値を載せる
L&Cは2016年、ボルボやロータスを抱える中国の自動車グループ「浙江吉利控股集団(編集部註:ジーリーホールディンググループ)」傘下の1ブランドとして誕生した。
会社設立にあたり、吉利では「いま自動車会社を作る意義はなにか」を徹底的に議論したという。その結果たどり着いたのが、車台やパワートレーンといったハードウェアは既存のものに頼り、今後成長の余地がある車体デザインやユーザー体験の領域で勝負しようという戦略だ。
この戦略自体は、バイトン(編集部註:中国のEVベンチャー)などITの領域で逆転を狙う多くの新興メーカーが選択する手法ではあるのだが、吉利が有利だったのは、運転支援や衝突安全の分野で世界をリードするボルボを傘下に持っていたこと。
かくして吉利は、ボルボの豊かな資産の上に、コネクテッド(繋がる)を軸とした新たな価値を付加した自動車ブランドを興そうとした。こうして吉利とボルボが共同出資を行い、誕生したのがL&Cなのである。
■発売後2分17秒で6000台が完売!
L&Cが初めてクルマを公開したのは、2017年4月に開かれた上海ショー。ヴェールを脱いだのはコンパクトSUV「01」だ。
驚いたのはこの01、ボルボがXC40で初披露するはずの新世代プラットフォーム「CMA(コンパクト・モジュラー・アーキテクチャ)」を本家に先駆けて採用、エンジンもボルボの「ドライブE」を用いた最新型(PHVもあり)なのだが、これまたボルボがデビューさせていない1.5L、3気筒モデルを先行搭載してしまうという気合の入った1台だった。
驚くのはそれだけじゃない。L&Cはこの立派な土台の上に、しっかりと新しい価値を乗っけてみせた。
充分に美しく、個性的なエクステリアはもちろん、コネクテッドや自動運転系デバイスもしっかり搭載、さらにカーシェアリングに欠かせないデジタルキーや、サブスクリプション(定額払い利用)といった最新サービスにも対応するという隙のなさで、日米欧の最新モデルにも引けを取らない商品力をアピールしたのだ。
実際この01、「価格は15万8800元~20万2800元(約275万~350万円)」、「オンライン販売のみ」、「永久保証」という条件で発売したところ、開始後わずか2分17秒で初回生産分6000台が完売した。
ジャーナリストの評価も高く、中国の自動車安全性能評価試験である「C-NCAP」では満点の5スター+を獲得するなど、いまや中国の人気SUVの一角を占めるモデルとなっている。
コメント
コメントの使い方