古くはマークII、チェイサー、クレスタが“マークII 3兄弟”と呼ばれたように、さまざまな部分を共用する兄弟車・姉妹車は今も昔も多い。直近ではトヨタのスープラとBMWのZ4のような例もトピックで、異なるメーカーながら基本部分を共用する姉妹車も出てきた。
メーカーが異なる姉妹車といえば、マツダ ロードスターとアバルト 124スパイダーもそのひとつ。この2台の市販車と競技車を乗り尽くしてきたレーシングドライバーの山野哲也氏が、両車の似ている部分と異なる部分を解説する。
語り:山野哲也
写真:編集部
ベストカー 2019年2月10日号
似ているのは「懐の深さ」
ロードスターとアバルト124スパイダーは、日本とイタリアのミックス車であることが、まず凄いんです。
トヨタのスープラとBMW Z4にしても、86とBRZにしても中身は同じ。それが普通ですが、この両車はエンジン、ターボを含むその補器類、クラッチなどは別のものを使っています。それをマツダの工場の同じラインで流して生産できているのが凄い。相当苦労して合わせているはずですよ。
ドア、前後フェンダー、ボンネット、トランクリッドなど外板パーツもすべて別。124スパイダーは1970年代の124スパイダーの雰囲気を出すために、わざわざフレームを溶接してフロントのオーバーハングを伸ばしているし、サスペンションもスプリング、ダンパー、スタビライザーなどが全部異なります。だからあんなに違った印象になるんです。
では、両車の走りはどうかというと、似ているのは懐の深さ。ロールやピッチングの量は違うんですが、タイヤと路面の接地性能はどちらも高くて、FRの後輪駆動車と思えないほどトラクション性能がよく、大きな舵角になってもフロントがしっかり食いついていてアンダーステアになりにくい。そこはよく似ていますね。
明確に違う足回りの味付け
でも、サスペンションのセッティングは明確に異なっていて、ひと言でいうと、ロードスターはロールさせて走り、124スパイダーはロールさせないで走るクルマ。
124スパイダーはカートのような走りを得意としていて、ハンドリングは「レスポンスの124、粘りのロードスター」という感じです。
124スパイダーのほうがオーバーハングが長いので、俊敏性では劣るように思うかもしれません。確かに慣性は残りやすいんですが、その半面、タイヤに荷重が載りやすく、タイヤを潰しやすいのでコーナリング初期のグリップ力を出しやすいんです。
一方のロードスターはタイヤのグリップ力が出るタイミングは124より少し遅いけど、曲がり始めてからの粘りがある。その違いです。
ロードスターは軽いぶんタイヤに荷重が載りにくいからロールをさせて、124はロールが大きいとタイヤに荷重がかかりすぎるので足を固める。それぞれに理由とよさがあるセッティングなんです。
ただし、サスペンションのジオメトリーは同じで接地性は変わらない。だから懐の深さは共通しているんです。
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