軽トラ界の「仁義なき戦い」!? 「農道のポルシェ」vs.「農道のフェラーリ」の今昔物語

メーカーの選択と集中、農業従事者の減少、惜しまれる撤退

軽トラ界の「仁義なき戦い」!? 「農道のポルシェ」vs.「農道のフェラーリ」の今昔物語
ハイゼットとともに軽トラ最後の生き残りスズキ「キャリイ」の現行モデル。初代の発売は1961年。居住性をアップした「スーパーキャリイ」も設定

 農道で駆け抜ける喜びを味わえる存在だったサンバーとアクティ。一見、見た目は同じでも、自動車メーカーそれぞれの思想が反映されたモデルが選べた軽トラック市場も、残念ながらこの10年程で様変わりしてしまった。

 現在でも軽トラックは、トヨタ、日産、ホンダ、マツダ、スバル、三菱、ダイハツ、スズキの国内自動車メーカー全8車にラインナップされている。だが、そのうち自社で生産されているのは、販売台数1位のダイハツ「ハイゼット」と2位のスズキ「キャリイ」だけなのだ。

 スバル製サンバーが2012年に、2014年には三菱製の「ミニキャブ」が、2021年にはホンダ・アクティトラックが相次いで生産を終了。以降、現在購入できる軽トラックはダイハツとスズキ以外はすべてOEM供給車なのである。近年、好調の軽自動車市場にあって軽トラックの販売台数は年々減少の一途をたどっているのがその理由だ。

 軽トラックは販売価格が安く、薄利多売がビジネスモデルである他、日本独自の規格である軽自動車はグローバルモデルとのプラットフォームやパーツの共有化が困難だ。つまり、投資に見合うだけの利益を日本国内での販売のみであげていく必要に迫られる。

 加えて、軽トラックのコアユーザーだった農業従事者の減少が販売台数に与えた影響も小さくないだろう。農林水産省ホームページ掲載の「農林業センサス累年統計年齢別基幹的農業従事者数」によれば、1980年には約413万人だった農業従事者(※農業就業人口の内の自営農家の世帯員数)は、2020年に136万人まで減少。農作物や農業機械の運搬で大活躍し、「農道の…」と謳われた軽トラック需要も激減してしまった。

 販売利益が少なく、今後の市場拡大も見込めないなか、自動車メーカーが他の将来性のある分野に限られたリソースを回そうと考えるのも当然だろう。今や軽トラックは、メーカー各社の看板こそ違えど、その中味は自社生産を続けるダイハツとスズキのOEM車ばかりとなった。無論、この2社の踏ん張りにより現在も軽トラというカテゴリーは保たれているのだが。

 環境や時代性に合わず淘汰されるのは自然の節理ともいえるが、スバル製サンバーとホンダ・アクティは、生産終了がアナウンスされると、ディーラーには最終モデルを求めるユーザーが数多く訪れ、販売が終了した年の生産台数が対前年比で大幅に増加したという。

中古車市場ではプレミア化!?

軽トラ界の「仁義なき戦い」!? 「農道のポルシェ」vs.「農道のフェラーリ」の今昔物語
2018年、「T360」誕生55周年を記念した特別仕様車としてアクティトラックに設定された「スピリットカラースタイル」は農業機械とカラーコーディネートが可能

 現在、中古車市場でもサンバーとアクティは安定した人気を誇り、一部グレードに関しては、プレミア化するほどだ。例えば2012年6代目最終型のサンバー、4WDのスーパーチャージャー仕様で低走行のマニュアル車ならば、車両価格170万円前後まで高騰。

 アクティトラックも2021年の最終型はもちろん、「T360」発売55周年記念モデルとして発売された特別仕様「スピリットカラースタイル」も人気で、こちらも程度の良いものは車両本体180万円前後(※2023年1月20日中古車販売サイト調べ)。いずれも新車の販売価格を上回る価格で取引されている。ヴィンテージならともかく、平成時代のネオクラシック的な価値が認められるトラックなんて他にあるだろうか。

 軽トラックの多様性を示した2台が失われてしまったことは、あまりにも残念だ。アウトドアブームの影響もあり、ピックアップトラックやクロスカントリーのSUVが見直されている昨今だけに、アウトドアの切り口から遊びのクルマとして注目される、あるいはリモートワークにより都会から地方へ移り住む際の現地の足となる、など軽トラックの需要が再燃し、名門ブランドが復活! なんてことにはならないだろうか。

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