社名公表という異例の措置
公正取引委員会はこうした行為が認められた発注者4030社に対して、具体的な懸念事項を明示した「注意喚起文書」を送付した。なお、注意喚起件数で最多だったのも道路貨物運送業だった。
また、受注者側から多く名前が上がり、個別調査の結果、前述のとおり協議に応じないなどの行為が確認された事業者については事業者名の公表を行なった。この公表は独禁法または下請法に違反する事実を認定するものではなく、自発的な協議を促し中小企業の経営を安定させるためとする。
独禁法に基づく事業者名の公表は異例の措置となるが、価格転嫁を積極的に推進するという観点から、政府の「新しい資本主義実現会議」でも公表する方針を示すなど、事前に予告されていた。
公表されたのは、佐川急便、三協立山、全国農業協同組合連合会、大和物流、デンソー、東急コミュニティー、豊田自動織機、トランコム、ドン・キホーテ、日本アクセス、丸和運輸機関、三菱食品、三菱電機ロジスティクスの合計13の企業と団体だ
事業者名が公表された各社は次のようにコメントしている。
佐川急便
「協力企業に対して、規定の委託料金とは別に物価高騰の影響に鑑み一時金の支給を行なっていたことから、従来どおりに取引価格を据え置いたわけではないと認識しておりました。積極的な協議の場の設定が要請されていることを読み取ることがでず、社名が公表されるに至りました。
本件を真摯に受け止め、既に当社から積極的に協議の場を設けるべく、順次書面にて協議の申し入れを開始しております。また、協議の場においては率直な意見交換ができるよう取り組んで参ります」
三協立山
「公正取引委員会からの社名公表を受けた対応として、お取引先へのご案内を発信するとともに、お取引先ごとの協議を進めていくための準備を進めております。今後、取引価格に関しては、お取引先からの申し入れの有無にかかわらず、双方で十分な協議が行なえるよう取り組みを進めてまいります」
全国農業協同組合連合会(JA全農)
「本会はこれまで、取引先業者からの値上げ要請に対しては真摯に対応し、双方納得した上での価格決定に努めてきており、実際に2022年も多くの品目で値上げを実施してきました。
ただし、価格設定の持ち方や時期については、品目ごと、取引先ごとに異なるものであり、取引先からの値上げ要請が一切ない場合に取引価格を据え置いていた品目もありました。今後は公正取引委員会からの指導もふまえ、専門家とも協議の上、必要かつ適正に対応してまいります」
大和物流
「当社は、取引先様との価格協議に関しまして真摯に取り組んでおりますが、今回の社名公表を踏まえ、労務費、原材料価格、エネルギーコスト等のコストの上昇分の取引価格への反映の必要性に関して相互信頼に基づく適切な協議を行なうとともに、取引先様とのパートナーシップの更なる構築に努めて参ります」
デンソー
「当社は、取引先の皆さまと密にコミュニケーションを重ねてきておりますが、今後もより一層のコミュニケーションを通じて、労務費、原材料価格、エネルギーコスト等のコストの上昇分の取引価格への反映の必要性について、価格の交渉の場において明示的に協議するとともに、法令順守の徹底に取り組み、取引先の皆さまとの相互信頼に基づく相互発展を目指す所存です」
東急コミュニティー
「当社としては、取引先のコストの上昇分について取引価格への反映の必要性に関する協議の申入れがあった場合には従前から真摯にこれに応じてきたところではありますが、公正取引委員会からの指導内容を含め、外部専門家とも協議するとともに、法令順守の徹底に取り組み、引き続き、取引先との間で取引対価にコスト上昇分を反映させる方法について真摯に検討、対応を進めて参ります」
豊田自動織機
「当社は引き続き、サプライヤーと定期的に価格交渉の場を持ち、原材料費やエネルギー費等コスト上昇分の価格反映を協議するとともに、真摯なコミュニケーションを通じて個社ごとの困り事に寄り添い、相互信頼に基づく両者の持続的成長を目指します」
なお、トランコム、ドン・キホーテ、日本アクセス、丸和運輸機関、三菱食品、三菱電機ロジスティクスのコメントは確認できなかった。