今後の取組は?
法令違反が多く認められる業種については、事業者団体による法令遵守状況の自主点検が行なわれ、公正取引委員会・中小企業庁が結果報告書を公表している。
その中で道路貨物運送業を所管する国土交通省は、業界全体として価格転嫁が十分に進んでいないことから、コスト上昇分を適切に転嫁できるよう転嫁円滑化施策パッケージに関する取組の周知・啓発を進めたいとしている。
しかし、取引適正化に向けた取組であっても、コスト上昇による値上げを推奨することは、独占禁止法の競争制限に抵触する可能性が高く、慎重な対応が求められる。従って価格交渉は各社に委ね、業界団体等が介入してはならないという認識だ。
発注者(元請運送会社)が「価格転嫁をおおむね受け入れている」とするいっぽう、受注者(下請運送会社)は「転嫁できていない」とする傾向にあり、運賃交渉が容易ではない状況も伺える。国交省としても下請法等の制度の周知に努める。
国交省によると「適正な運賃」には燃料費等を含むというのが基本的な考え方で、荷主や元請事業者等に理解と協力を呼び掛けるとともに、取締りの強化、中小企業への指導、荷主への働きかけ等の法的措置を行なっている。
今回の自主点検結果では、発注者・受注者いずれの立場においても価格転嫁できていない事業者が確認されたことから、引き続き、関係省庁と連携して取引適正化に向けた取組を推進していきたいとした。
また公正取引委員会は、「積極的に端緒情報の収集を行うとともに、独占禁止法や下請法上問題となる事案については、事業者名の公表を伴う命令、警告、勧告など、これまで以上に厳正な執行を行なっていく」としており、社名の公表は今回限りの特例措置ではない可能性がある。
このほか、発注者が積極的に価格転嫁に向けた協議の場を設けることが重要であるという観点から、独禁法Q&Aおよび下請法運用基準を改めて周知するとともに、中小企業等が賃上げの原資を確保できるよう、エネルギーコストなどの上昇分を適正に価格転嫁できる環境の整備に取り組んで行く。
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