2018年9月16日午前、福井県で「僧衣」と呼ばれる僧侶の装いを着てクルマを運転していた僧侶が検挙され、青切符を切られた。
違反内容は「運転に支障のある和服での運転」。
しかし、実際に僧侶の多くからはこの検挙に疑問を持つ声が多く寄せられ、2019年1月26日には、福井県警が「違反を確認できない」ということで送検しない決定をした。
実際に僧侶の資格を持つレーシングドライバー松田秀士氏が、僧衣を着て運転してみました。
文:松田秀士/写真:平野学
■僧衣が危険というには基準が曖昧過ぎる
(TEXT:ベストカー編集部)
2018年9月16日午前10時過ぎ、福井市内の県道を僧衣姿で運転していた浄土真宗本願寺派に属する40代の僧侶が、取り締まり中の警察官によって制止され、青切符を切られた。
その僧侶は法事に向かう途中だったという。違反内容は「運転に支障のある和服での運転」。
福井県が定める運転時の服装規則に反しているとのことで、その僧侶には反則金6000円の納付が課せられた。
この一件が明るみに出た2018年暮れ以降、僧衣姿での運転が違反に問われた事実に疑問を感じた全国の僧侶が、宗派関係なしに僧衣の動きやすさをアピールする動画をツイッターに相次いで投稿。
海外からも注目されるほど大きなニュースとなった。注目の高まりを受け、福井県警は1月9日、福井新聞の取材に対し、「僧衣や和服が一律に違反になるわけではなく、着方を見て違反だと判断した」と回答。
県警交通指導課によると、その僧侶はくるぶしまでの長さの白衣の上に、袖丈約30㎝の僧衣「布袍(ふほう)」を着用。
①白衣の裾幅が狭く、両足の太もも、膝、足元が密着
②布袍の両袖が下に垂れ下がっている状態で運転していた
交通指導課は摘発の根拠として、「両足が動かしにくく、とっさの時にブレーキ操作を的確にできない恐れがあり、また垂れ下がった袖はシフトレバーやハンドル周辺の各種レバーに引っかかる恐れがある」と説明した。
切符を切られた僧侶が所属する浄土真宗本願寺派の本山である京都・本願寺は「法令遵守は大切なこと」としたうえで、「僧侶が服装を理由に反則処理されたことは受け入れがたい」と話している。
今回の一件、ベストカーが思うに県が定める服装規制に潜む曖昧さと、僧衣に対する無理解が根底にあると思われる。
福井県警交通指導課は「裾がくるぶしまであっても、ゆったりと締め合わせたり、まくし上げるなどして両足を動かしやすくすれば、違反にならない」とした。
しかしどの程度がゆったりなのか、どの程度まで裾をまくし上げるのかなどの基準はなく曖昧さが残る。
僧衣での運転が本当に危険なのかを確かめるため、僧侶にしてレーシングドライバーである松田秀士氏に検証をお願いした。
■僧衣でドライブ、全然イケるぞ!!
私、松田秀士は浄土真宗本願寺派の僧侶でもあります。寺族で、大阪で暮らしていた26歳まで、法衣でお勤めをしておりました。
門徒さん宅や葬儀場に向かう時は、何度もこのように法衣でクルマを運転していました。
さて、今回の件で問題視されているのは、法衣そのものではなく、着方であるとの回答を、福井県警はしています。
約30cmの袖幅が運転時にシフトレバーやウインカーなどの操作系に引っかかるのではないかと、県警は問題視しました。
しかし今回の試乗車であるコックピットが狭いロードスターでも、試乗中、一度もそのようなことは起きませんでした。
またこれまで、さまざまなクルマを法衣で運転した経験がありますが(実はこれまでいろんな広報車も運転しています)、袖口が引っかかったことは一度もありません。
次に「両足が動かしにくく、とっさの時にブレーキ操作を的確にできない恐れがある」と判断した根拠に、「白衣のすそ幅が狭く、両足の太もも、膝、足元が密着している」とあります。
しかしこれに関しても普通に足は動かせ、両足が密着することなどありません。
結論として、法衣での運転はまったく問題ないと思えます。それよりも重要なのは、どういう服装が違反なのか?
写真やイラスト等で誰もが認識できるよう、わかりやすく示すことではないでしょうか。
各宗門と連携して実証実験を行い、危険かどうかを判断する。そうすることで、もしも危険があった場合の対処法も見えてくるというものではないでしょうか。
現状では違反として決めつけるには、根拠となるデータがないように思えます。
【まとめ】
松田氏も言っているように、やはり明確な基準を定めるのが一番と思われるこの案件。当たり前だが全国の僧侶も、法令は遵守したいと思っている。
なので、納得できる法整備が必要だ。
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