■効果的に社会への情報発信を
もう一つ大きな課題が、バス乗務員に対する世間の印象だ。近年、大きな事故が相次ぎ、中小零細の事業者の実態が報道された。
安全確保の体制も乗務員の待遇も、いわば最低ランクの会社の現状が世間に広がりすぎてしまった。本人は乗務員志望だが家族から止められる「嫁ブロック」という言葉さえあるという。
だが、たとえば公営や私鉄系の事業者の安定度や待遇は、今の日本では、他業界に比べ決して悪くはないはずだ。
むろん、私鉄系事業者の分社化などで、30年前と比べると待遇は下がっており、不満はあるだろう。
ただ、世間は、その不満と、報道で伝わる底辺の事業者の「ワーキングプア」イメージを混同してしまう。このままでは、大手事業者の求人にも、働く当人の自尊感情にも影響する。待遇改善はもちろん重要だが、同時に、事業者間の違いをより可視化することも必要だ。
一方、大手を中心に、運転や接客について会社の「管理」は厳しくなっている。技術や意欲はあるがその雰囲気を嫌う人はいるはずで、名の知れた大手の乗合事業者に代わる選択肢を提示し、自身に合う会社に納得の上で入社できる環境を作ることが、定着率の向上に有効だろう。
また、「自動運転」を想起しやすいせいか、自動化により職をなくすという心配も聞かれる。
だが冷静に考えると、他業種では、IT導入により「8人だった職場を7人にと、人手を少しずつ減らしている。バスは元から「ワンオペ」だ。当面の間、自動運転技術は、運転の補助や事故防止に寄与はしても、「1人→0人」の変化が一気に進むとは思えない。
最後に、「どらなび」のような民間の求人サービスは、短期的な成果(採用数)を求められる。そのため、現に乗務員を志望している人が対象となる。一方、バスの仕事の魅力を広く社会に発信し、バス乗務員志望者の総数を増やすことも重要なのだ。