たくさん売れたわけじゃないが何年経っても覚えている、印象的だったクルマを取り上げるこの企画。今回は、どこか東欧風の香りを漂わせるスズキ SX4セダンを取り上げる。このダサかっこよさで中身はスイフト、全然アリでしょ!!
※本稿は2025年5月のものです
文:小沢コージ/写真:望月浩彦 ほか
初出:『ベストカー』2025年6月10日号
まるでジウジアーロデザイン!?
ブダペストとかプラハとか東欧の旧市街に妙に似合いそうなダサカッコイイカタチに、高品質なんだけどシンプルなインテリア。加えて妙にカッチリした足回り。20年前の芸能界しかり、今じゃ考えられない企画物ってあるよね!
それは2007年発売のスズキSX4の、よりダサいほうのセダン。こんな不思議企画がなぜ生まれたかって、それはスズキとフィアットの謎の共同開発がゆえ。当時スズキはグローバル小型車戦略を打ち出してて、欧風なスイフトを出したり、北米GMとくっついて離れたり、数年後にはドイツVWとも提携&別離。
その一貫か、2006年にデザインはジウジアーロ率いる伊イタルデザイン、設計&製造は主にスズキでディーゼルエンジンのみフィアットというSX4とその兄弟車のフィアットセディチ発売。生産は日本およびハンガリーだ。
なかでも1年後に出たセダンは全長4m半ばと小柄なわりに走りはいいし、トランク容量515Lと広大。ゴルフバッグが5つ載るというふれこみでいいクルマだったが、当時国内でコンパクトセダンブームは消え去っていたのと、欧風デザインで泣かず飛ばず。
ま、スズキ特有のチャレンジ新車企画で売れなかったのはさておき、今考えてみると安心の日本製ヨーロッパ車みたいな感じで悪くない。中古価格も50万円前後と超安いし。
見た目は確かに一見冴えない。ただし開発コンセプトのクロスオーバーレボリューションそのままに、時代先取りのコンパクトSUVパッケージが凄い。
ボディは前後が絞られた空力デザインでありつつ、大人5人が余裕で乗れる高効率パッケージ。フロントAピラーには三角窓もあり視界良好。もしやジウジアーロがデザインしたの? と思わせる塊感アリだ。
もちろんイマドキのLEDヘッドライトや先進安全装備は少ないが、当時新しいディスチャージヘッドライトや自動点灯のオートライト装着。
乗っても内装はシンプルだが、クロスオーバーSUVらしくヒップポイント高めで見晴らしはよく、欧州向けらしくシートは大柄。
リアシートのヒップポイントはフロントより55mm高くこれまた視界良好。オマケに5ドア車はタンブルフォールディングシートで使い勝手よし。カーテン&サイドエアバッグも装着可能でそのあたりはまさしく欧州基準。
安心と信頼のスイフトがベース
さらにいいのは走りで、当時のスイフトベースにコンピュータ解析でボディ剛性をアップし、高剛性サスペンションも新設計。欧州テストを繰り返したそうで走りのしっかり感、ステアリングフィールのよさはスイフト以上。さすがはWRCベース車だけある。
今回のクルマは最廉価の1.5Lセダンだったので残念ながら15インチの鉄チンホイールだったが、5ドアの2L仕様なら17インチアルミもあり得るし、フロントは全車15インチディスク。ブレーキタッチのカッチリ感も含め欧州車テイストがしっかり味わえる。
加えてセダンこそ4駆設定なしだが5ドアはレスポンスのいい電子制御のi-AWDも選べて、まさに安くて安心な日本製ヨーロッパ車そのもの。オマケに撮影車は17年落ちとは言え、走行6.4万kmで内外装4.5点台の高品質車がコミコミ40万円! オマケに壊れにくいスイフトがベース車なんで文句ナシでしょ。
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