2023年の春闘がスタートしている。「ユニクロ」が正社員の賃金を最大で4割引き上げると発表したことが注目されているが、自動車など大手企業の集中回答日は2023年3月中旬を予定。掲げた目標どおりに“満額回答”となるのかどうかを占ってみた。
文/ベストカーWeb編集部、写真/トヨタ、日本自動車工業会、自民党、ファーストリテイリング、AdobeStock(トビラ画像:umaruchan4678@AdobeStoc)
■ユニクロは最大4割の賃上げを表明したが……
急激な物価高に歯止めがかからず、家計への負担増を懸念する声が出ているなかで、いわゆる2023年春闘がスタートし、個別企業による賃上げ交渉が本格化している。
岸田文雄首相は「物価高を上回る賃上げ」を経済界に強く要請しており、財界総本山の経団連・十倉雅和会長は「物価動向を特に重視し、企業の社会的責務として賃金引き上げのモメンタムの維持・強化」を呼びかけている。
労働組合代表の連合の芳野友子会長も「これまでの延長線上の議論にとどめることなく、未来をつくり替える手段は賃上げによる『経済の好循環』の再構築にほかならない」と強調。基本給を底上げするベースアップ(ベア)を3%、社員の勤続年数や年齢などに応じて基本給が増える定期昇給(定昇)を2%、合わせて5%程度の賃上げ目標を掲げた。
雇用主の経営者側と従業員の関係は、ひと昔前までは賃金や待遇面などを巡って激しく対立し、労使間に緊張感が走った。 “犬猿の仲”とまで言われたほどの労働組合と企業の団体が、足元の物価高を踏まえた賃上げに「労使協調で取り組む」との認識で手を取り合うのは極めて異例だ。
その背景には、バブル崩壊後30年近く、好業績を上げた企業でも賃上げには消極的だったため、日本のサラリーマンの多くは給料がまったく上がっていないことがある。
そればかりでなく、物価の影響を考慮した昨年の「実質賃金」が、2年ぶりのマイナスとなり、基本給や残業代などを合わせた「名目賃金」(現金給与総額)はやや増加に転じたものの、急速な物価高騰に追い付けずに一般庶民の台所事情は一段と厳しさを増すばかりだ。
もっとも、政府、労働界、経済界が、三位一体となって積極的に呼びかけた甲斐もあってか、労使交渉の前に率先して「賃上げ」を宣言する大企業も少なくない。カジュアル衣料品の「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングは、国内の正社員約8000人を対象に年収を最大約4割引き上げると発表。初任給を25万5000円から30万円に、入社1~2年目で就任する新人店長の月収を29万円から39万円に引き上げる。
家庭用ゲーム機の任天堂は4月から全社員の基本給を定期昇給とは別に一律10%引き上げるほか、プラント大手の日揮ホールディングスも月額ベースで約10%の賃上げを実施する。さらに、日本生命保険は7%程度、サントリーホールディングスも6%程度の賃上げを表明している。
コメント
コメントの使い方