春闘2023スタート! 果たしてクルマ界の「賃上げ」はユニクロのように大幅アップとなるか!?

■550万人の自動車産業はどう「賃上げ」に応じるのか? メーカー各社の労組は続々と前年超えの要求額

2022年元旦に日本自工会ほか5団体が出した新聞広告。「♯クルマを走らせる550万人」という力強いキャッチコピーが掲げられていた
2022年元旦に日本自工会ほか5団体が出した新聞広告。「♯クルマを走らせる550万人」という力強いキャッチコピーが掲げられていた

 大企業のなかには連合の掲げる「5%」を上回る太っ腹の経営者が相次ぐ。こうしたなか、裾野まで含めると約550万人の雇用を抱えている自動車業界が、この春闘で実感がわくような賃上げにどこまで応じるのか、注目される。

 すでに3月15日に予定している一斉回答に向けて、自動車メーカー各社の労働組合が、2023年春闘の要求書を経営者側に提出したが、このうち、ホンダグループの労働組合でつくる全本田労連は、基本給のベアに相当する賃金改善分と定昇分を合わせると、月1万9000円の賃上げを要求した。

 ホンダ労組の要求額は約30年ぶりの高水準で、ベア分は1万2500円で昨年要求に比べて約4倍。賃上げ率は連合の水準と同等の5%程度に達する。年間一時金のボーナスも基準内賃金の6.4カ月分で、要求ベースでも昨年実績よりも0.4カ月上積みされた。

 また、日産の労働組合は賃上げの要求額をひとり当たり月1万2000円として会社側に申し入れた。日産は2005年以降、基本給を底上げするベアや定昇の仕組みがなく、成果主義に基づいた独自の賃金制度を採用しているが、移行後では2015年に並ぶ過去最高の要求額で、前年に比べると4000円の増額になる。賃上げ率は約3.5%だが、年間一時金も前年(5.2%)実績を上回る年5.5カ月分を要求している。

 さらに、マツダの労働組合は、ベアに相当する「賃金改善分」と定昇に相当する「賃金制度維持分」の総額を月1万3000円、年間一時金は5.3カ月分を要求した。要求ベースの賃上げ率は昨年を大きく上回る約4%。現在の賃金制度になった2003年以降で最高で、一時金の要求は、5.4カ月分を求めた2018年以来5年ぶりの水準となる。

 スバルの労働組合はベアと定昇を含む賃上げは月1万200円を要求。要求ベースの賃上げ率は3%を上回るほか、年間一時金は5.6カ月分を要求している。

 このほか、スズキの労働組合は月1万2200円の賃上げと、年間一時金は前年より0.4カ月の増額となる5.6カ月分を要求した。三菱は昨年末、管理職を除く正社員に10万円を、期間工やアルバイトなどにも7万円の“インフレ手当”を支給し、大いに注目を集めたが、賃上げについても1万3000円、年間一時金も6.0%を要求している。

■国内自動車メーカーの雄、トヨタはどうなるのか? 要求額は過去20年間で最大水準か

前回2022年の春に行われたトヨタの労使協議会の様子
前回2022年の春に行われたトヨタの労使協議会の様子

 そして、最も注目されるのがトヨタ自動車だ。だが、トヨタの水準が自動車業界だけでなく、日本の産業全体の上限の目安になる可能性があることから、過剰な刺激を避けるため、平均賃上げ額やベアの具体的な水準は公表していない。

 それでも賃上げの流れを後押しする観点からベアを要求したことを3年ぶりに明らかにするとともに、トヨタ労組によれば「物価高を考慮し、ひとり当たりの平均賃上げ要求額は過去20年で最高水準」になるという。ただ、年間一時金は月給の6.7カ月分で昨年(6.9カ月分)より下回る。

■14年ぶりの社長交代でトヨタは異次元の賃上げへ?

2023年1月26日に突如、14年ぶりに発表されたトヨタのトップ交代人事。豊田章男社長(左)から佐藤恒治執行役員(中央)に4月からバトンタッチされ、内山田竹志会長(右)が退任して豊田章男社長が新たに会長に就く
2023年1月26日に突如、14年ぶりに発表されたトヨタのトップ交代人事。豊田章男社長(左)から佐藤恒治執行役員(中央)に4月からバトンタッチされ、内山田竹志会長(右)が退任して豊田章男社長が新たに会長に就く

 折しも自動車大手7社の2022年4~12月期決算が出そろったが、原料高に加え、半導体不足などで新車の供給が減ったものの、米国を中心に販売価格の値上げや円安の恩恵を受けて全社が増収。ロシア事業からの撤退の影響でトヨタと日産を除く5社の最終利益が増益となり、今期の業績も増収増益を見込んでいる。

 半導体不足も依然として販売の足かせとなるなど経営環境は厳しく、先ゆきに慎重な見方もあるが、日本の基幹産業と言われ、長い間春闘相場をリードしてきた自動車メーカーが足元の物価上昇に負けない賃上げに積極的に応じなければ、労働者の7割を占める下請けなどの中小企業にまで広く行き渡らない。

 しかも電動化や自動運転など経営環境の変化に応じて人材の確保も喫緊の課題であり、ショボ過ぎる賃金ではグローバルで活躍する有能なスペシャリストは見向きもしない。

 とりわけ、トヨタは昨年の春闘では集中回答日より1週間も早く “満額回答”で妥結するというサプライズで、賃上げの流れを演出した。今年の労使交渉でも14年ぶりの社長交代という大変革に臨むなかで、経営側は“ご祝儀”を出すつもりでも「ユニクロ」などの大盤振る舞いに負けないほどの「異次元の賃上げ」でなければ日本経済の復活に一石を投じることもできない。

 世界一の「クルマ屋」の責務としても世間をあっと驚かせるような妥結額を示してもらいたい。

【画像ギャラリー】岸田内閣が要請するようにクルマ界の「賃上げ」は大幅アップを勝ち取ることができるのか?(7枚)画像ギャラリー

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