スカイラインといえばクラウンと並び、日本で50年以上の車名を誇る名車のひとつだ。しかしどうも最近のスカイラインには元気がない。
現行型は”インフィニティ”のエンブレムがついているし、サイズだって欧州勢と比肩するような貫禄をみせている。たしかに技術や走りは凄いかもしれない。
それでも多くの日本人が待っている「あの頃のスカイライン像」からはかけ離れてしまっているのも事実。
日産もスカイラインというブランドに重きを置いていないようにも思える。なぜこうなってしまったのか。スカイライン、もう終焉の時期なのでしょうか?
文:岡本幸一郎/写真:日産
■R34でファンの固定観念に応えたかに思えたが……
「スカイライン」を名乗るからには、いやがおうでも注目される。過度の期待からよからぬいわれようもすることもある。
往年のファンからすると、V35以降をスカイラインと認めたくない気持ちは、1968年生まれの筆者も理解できなくはない。
実際、V35のもとになった1999年の東京モーターショで披露されたコンセプトモデル「XVL」は、本来スカイラインとして開発されたわけではなかったのは報じられているとおりだ。
しかし、そうなったのにはもちろん理由がある。スカイラインがよかったのはR32まで。R33で大幅に評判も販売台数も落とし、続くR34でさらに激減した。
R34はいかにも往年のファンが喜びそうないでたちだと思っていたのだが、売れ行きは芳しくなく、非常に短命に終わった。
日産としても、スカイラインをどうすればよいのかわからなくなっていた。そこで白羽の矢が向けられたのが「XVL」だ。
予想外の展開にファンならずとも驚かされたことを思い出すが、ほどなくV35は是か非かという論争が巻き起こったのも周知のとおりだ。
しかし、考えてみてほしい。もともとスカイラインというのは、日本車の中では異彩を放つ、その時代の他車とはひと味違った雰囲気を感じさせるクルマだった。
実はハコスカもケンメリも、まさしくそれが当てはまる。
ところが、いつしかスカイラインにはある種の固定したイメージが強くついてまわるようになった。R34はそうしたファンの固定観念に応えたクルマだったのだが、市場は限られた。
そこで初心に立ち返ってスカイライン像を模索した結果、XVLこそこれからのスカイラインとして相応しいと判断したわけだ。
V35に続くV36も同じ方向性で出てきた。それはスカイラインはこれで行くという日産の意思表示に違いなかった。
かつてのような是か非かという声もそれほど聞かれなくなった。
■中国人観光客のためにインフィニティエンブレムを装着?
2014年に登場したV37もその延長上にあるが、もはやV37ではスカイラインであることに違和感を唱える向きもあまりなくなった。
むしろV37は、V35~V36とも少々異質で、跳ね上がるリアのフェンダーラインは往年のサーフィンラインを想起させている。
またヘッドライトの意匠もハコスカを彷彿とさせたり、全体的に男っぽい雰囲気を放っていて、妙にスカイラインっぽいものを感じさせる。
V35がスカイラインと命名されたことは、結果的につじつまがあったように思えてくる。
一方で、V37がインフィニティのマークで日本でも販売されていることには少なからず非難の声があるのは事実。
むろん矛盾していることは日産だって百も承知だが、実はこれ、日本を訪れる中国の観光客に配慮した方策の一環だ。
中国ではインフィニティと日産ではブランドの価値に大きな差がある。
「Q50」はプレミアムカー。彼らの国でインフィニティとして売られているクルマが、日本では日産のエンブレムを付けて走っているのを見られては、あまりよろしくないわけだ。
それを知ると、なおのこと日本市場を軽視しているのではという声が上がりそうなところだが、なにせ売れる数が圧倒的に違う。
市場の事情がそうなのだから、納得するほかない。
そんなスカイライン=Q50だが、このところ国内外とも失速気味だ。もともと日本では売れていないが、北米や中国ではそれなりに人気があった。
インフィニティ自体、コスパが高くてスポーティというイメージにより海外では高く支持されており、その象徴的な存在であるQ50はデザインの評判もよい。
内容的にも世界最速の量産ハイブリッドやダイムラー製エンジンの搭載、バイワイヤのステアリングや先進安全技術の数々など、見どころは多いからだ。
とはいえ、すでに新鮮味が薄れたのは否めない。
ドイツ勢を中心とする競合車はずっと頻繁にアップデートを繰り返し、商品力を維持し向上させる努力に余念がない。
一方でQ50は、肝心のドライバビリティも粗削りな部分が見え隠れするのは否めず、あまり改善されていない。
そのあたりにユーザーは敏感に反応するもの。せっかくいいものをもっているのに、実にもったいなく感じられてならない。
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