■「匠塗」とは、マツダの技術魂を表した色味のこと
マツダのボディカラーといえば、やはりソウルレッドクリスタルメタリックがもっとも印象的だ。
このカラーが「匠塗」第1号であり、マツダのすべてのカーラインアップに採用するなど、ブランドカラーのように拡散してきた。
ただ、このソウルレッドクリスタルメタリックが知名度を獲得する一方では、それ以外のカラーリングの印象がやや薄くなっていた、ということがあった。
匠塗の新色として、昨今のマツダが力を注いでいるのが、機械や金属の色味を表したマシーングレーというカラーリングだ。
正確には、「マシーングレープレミアムメタリック」というこの新カラーを中心となって開発したのは、マツダのデザイン本部 クリエーティブデザインエキスパート(カラーデザイナー)岡本圭一氏と、車両開発本部上席エンジニア(塗料開発エンジニア)の山根貴和氏。
このマシーングレーは、「マツダのヘリテージを表現したい」という想いから誕生したという。
■「マシーングレープレミアムメタリック」開発秘話とは
2016年9月3日にマツダブランドスペース大阪で開催したブランドイベントの場で、両氏がマシーングレーの開発について語った内容を一部ご紹介しよう。
カラーデザイナーの岡本氏によると、「魂動デザイン」を採用して以降、デザイナーが目指すものや、造り出したいカラーの要求レベルが、急激に高まってきたという。
岡本氏は、魂動デザインを支える色とは何かを考え、いままでになかった質感表現が求められると考えたという。
たどり着いたのが、ロータリーエンジンやスカイアクティブテクノロジーなど、マツダの技術魂である「マシーンの美学」だったそうだ。
マシーンを象徴する素材である「鉄」の質感を色に込めたい、そこから新カラーの開発がスタートしたという。
ただ、塗料開発エンジニアの山根氏は、岡本氏からの「マシーンを象徴する色味を量産したい」という相談について、最初は、岡本氏がどんな色のことを言っているのか理解できなかったそう。
そのため、まずは岡本氏のイメージする色を読み解くところから始めたそうだ。
「瑞々しい鉄の質感」に「瑞々しい艶感」を付加するという、デザイナーの抽象的な漠然とした表現をどう解釈したらいいのか、大いに悩んだそうだ。
鉄を磨いて表面構造を徹底的に調べて、鉄の質感はどこから生まれるのかを分析したりもしたという。
試行錯誤の結果、山根氏は、光と影とのコントラストがクッキリと際立って見えるよう、従来のメタリック塗装ではなく、アルミフレーク(微細なアルミ粒子)を使って、金属の表面のように見える塗装を研究したそう。
その結果、磨かれた鉄だけが持つ凄味のある質感を塗装で表現することが可能になったという。
これまでのギラギラしたメタリックグレーとは異なり、金属のような色味からは細やかさが感じられ、高品質な印象を強く感じられる。
コンパクトカーから3列シートSUV、オープンスポーツまで、車型が変わっても質の高い塗装が施されているので、ブランド統一の一環としても、カラーリングが大いに役立っていると感じる。
「匠塗」のこだわりぶりを知ると、同じく発色を大事にする化粧品メーカーがインスパイアされるのも不思議ではないと思えてくるのではないだろうか。
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