さらば名門カムリ!! 世界中で売れているのになぜ日本ではダメなの…現行カムリの利点とセダン文化の終焉

カムリの魅力は、セダンだからこそ味わえるもの

 セダンの魅力、それはやはり「走行性能」だ。セダンはフロントのエンジンセクション、キャビン(乗員)セクション、ラゲッジ(荷室)セクションと、ボディが3つに仕切られていることから、その間に隔壁や骨格を設置できるため、ボディ剛性を高めやすい。また、セダンはSUVやミニバンに比べて全高が低いために重心が低い傾向となる。この「低重心」と「高剛性」は、加速、減速、コーナリング、高速走行といったあらゆるシーンで、安心感の高い走行を可能にしてくれる。さらには、トランクの下部に後輪タイヤが収まることから、隔壁で遮断されたキャビンスペースにはノイズが入りにくく、静粛性も高くなる。

 カムリも、低重心なTNGAプラットフォームによって、横揺れの少ない乗り心地と安定した高速走行をもち、ここに、新開発のマクファーソンストラットサスペンション(前)や、ダブルウィッシュボーンサスペンション(後)、またTNGAの新型「ダイナミックフォースエンジン2.5」とハイブリッドシステムTHS-IIを組み合わせることなどで、魅力的なスタイリング、スポーティなハンドリング性能、上級モデルにふさわしい乗り心地、加速性能、静粛性を実現している。これらはセダンだからこそ味わえるものであり、これが乗用車の基本なのだと感じさせずにはいられない。

4910×1840×1445(全長×全幅×全高[mm])、ホイールベース2825mmとりっぱなサイズ。TNGAプラットフォームならではの低重心設計、セダンならではの高剛性、完成度の高いTHS-IIシステムにより、カムリ史上最高の走りをみせてくれる
4910×1840×1445(全長×全幅×全高[mm])、ホイールベース2825mmとりっぱなサイズ。TNGAプラットフォームならではの低重心設計、セダンならではの高剛性、完成度の高いTHS-IIシステムにより、カムリ史上最高の走りをみせてくれる

パッケージ効率がよくないことに加え、利点を発揮できない日本では衰退も仕方ない

 ただ、日本では狭い道路や駐車場といった道路事情から、小さなボディでありながら、多人数乗車できたり荷物をたくさん積み込めるという高効率パッケージが好まれる。また、都市部では渋滞が多いため、セダンのメリットは地方都市でなければあまり発揮できない。経済的なコンパクトカーや軽自動車のほうが好まれるのも当然だ。

 セダンといえば、日産でも、フラグシップの「シーマ」と、セドリック/グロリアの系譜である「フーガ」が2023年夏、生産終了となっている。国内セダンの現状は、日産の「スカイライン」やマツダの「マツダ3」や「マツダ6」、トヨタでも「MIRAI」や「カローラ」、ホンダ「シビック」など、残されているモデルもいくつかあるが、(社用車としての需要があるカローラを除いては)どれも売れているとは言い難い。

 レクサスの「LS」や「ES」はまだましのように思えるが、レクサスだって売れているのは「RX」や「NX」などのSUVたちだし、2023年10月には、日本未導入だったレクサスのミニバン「LM」がとうとう日本にも上陸するということなどを考えれば、これらだってどうなるかはわからない。

 カムリの国内終了の一報は、いよいよ日本でのセダン終焉が近づいていると感じさせるものだった。北米や中国でも、日本のように「セダン離れ」が進んでいるようだが、それでも売れているということは、カムリの良さ、デザイン性、ステータス性が評価されているのだろう。日本のラインアップから、また一台名車が消えてしまうのは非常に残念ではあるが、今後も世界で活躍してくれることを期待したい。

レクサスのフラッグシップセダン、LS。高級車なら、セダンのほうが走りや静粛性の面でアドバンテージがあるのだが…
レクサスのフラッグシップセダン、LS。高級車なら、セダンのほうが走りや静粛性の面でアドバンテージがあるのだが…
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