ドライバーが普段意識する違反といえば、最高速度違反や一時停止違反、信号無視などだと思います。これらについては、警察による取り締まりも多く行われているため、意識せざるを得ないところですが、交通事故発生件数において、もっとも多いのは「安全運転義務違反」です。
事故の加害者とならないために気を付けなければならない安全運転義務違反について、詳しく振り返ります。
文:吉川賢一
アイキャッチ写真:Adobe Stock_ metamorworks
写真:内閣府、Adobe Stock、写真AC
交通死亡事故全体の約半分が、安全運転義務違反によるもの
道路交通法第70条「安全運転の義務」では、「車両等の運転者は、当該車両等のハンドル、ブレーキその他の装置を確実に操作し、かつ、道路、交通及び当該車両等の状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない。」と規定されています。これに違反する行為が「安全運転義務違反」。ドライバーは運転中、常にハンドルやブレーキを確実に操作し、かつ、周囲の状況をしっかり把握して事故を起こさない運転をしなければならないということです(当たり前ですね)。
内閣府が発表した「令和4年交通安全白書」によると、令和3年中の交通死亡事故発生件数のうち、安全運転義務違反が全体の53.6%を占めており、安全運転義務違反のなかでも、漫然運転(13.7%)、運転操作不適(12.9%)、安全不確認(11.5%)、脇見運転(9.9%)が多いことが報告されています。一時不停止(3.3%)や信号無視(4.3%)、歩行者妨害等(8.4)よりも、ずっと多いのです。
2022年に多かった4つの「安全運転義務違反」
では、この漫然運転や運転操作不適、安全不確認、脇見運転とはどのようなものか、また、その他の安全運転義務違反について、具体的に確認しましょう。
●運転操作不適
ブレーキ操作やハンドル操作を適切に行えなかった場合のほか、ペダルの踏み間違えや、片手運転などもこの運転操作不適に該当します。片手運転をしていてハンドル操作が間に合わないというのは運転者の重大な過失です。昨今は、ブレーキペダルの踏み間違えによる事故が問題となっていることから、2021年11月以降登場の新型車には、衝突被害軽減ブレーキ(自動ブレーキ)の装着が義務化されており、これらを装備したクルマが普及することで、今後はこの運転操作不適が減ってくることが期待できます。
●漫然運転
居眠りとはならないまでも、考え事をしていたり、頭がボーっとしていて運転操作に集中しておらず、危険を見落としている状況のこと。ぼーっとしていて前のクルマに追突してしまった、歩行者がいるのを確認していたのにクルマを停止させなかった、等が該当します。体調不良や寝不足なども要因と考えられており、結果的には大事故に繋がることもある危険な運転行為です。
●脇見運転
景色に見とれてしまったり、ナビゲーションやオーディオの操作などで前方を見ずに運転する状況のこと。信号待ちをしている間にナビ操作に夢中となり、ブレーキから足を離してしまった、高速走行中に景色を見たために前走車に追突してしまった等が当てはまります。こちらも交通事故や交通死亡件数の多い大変危険な行為です。
●安全不確認
車線変更をするときに左右をよく見ずに運転したり、交差点で右左折する際に歩行者や自転車の通行を確認せずに運転する状況のこと。特に夕暮れ時や夜間など、視界が悪くなる状況化で起きやすい交通事故です。
●その他
他にも、クルマや歩行者、バイクといった相手を検知しながらも、その危険性を軽く見て、相手の動きを注視しない「動静不注視」や、交差点や横断歩道付近、見通しの悪い道を、安全運転ができない速度で走るなどの「安全速度違反」、相手が避けてくれるだろうと勝手に思いこみをして、相手の動きの予測を見誤る「予測不適」なども、死亡事故に多く繋がっています。
コメント
コメントの使い方