バンの荷室をカットし、外に出た荷台としたスタイルのデッキバン。トラックでありながら、後部座席を有しているため優れた積載性と室内の利便性の両立を実現している。しかし2023年4月現在、デッキバンをラインアップし続けるのはダイハツ(アトレー/ハイゼット)だけだ。なぜダイハツはデッキバンを作り続けるのか。その理由に迫ってみよう。
文/西川昇吾、写真/ダイハツ
■「冷蔵庫を載せたい」電気屋さんの要望で誕生
60年以上に及ぶハイゼットの歴史の中でデッキバンが登場したのは1989年のこと。7代目ハイゼットバンに追加モデルとしてデッキバンが登場した。デッキバンとしては初代となるこのモデルに求められた性能は荷台に冷蔵庫を載せることができるということ。これは当時の電気屋さんからの要望だったそうだ。
当時は現在のように大型の家電量販店ではなく、個人経営の家電販売店が多くあった。今もあるパナソニックの「街のでんきやさん」が分かりやすい例と言える。家電製品の販売だけでなく、修理やメンテナンスといったアフターフォローを手厚くしてくれるのがこのような電気屋さんの特徴だ。
ユーザーの家での出張修理や家電を入れ替えのために住宅地の狭い道を通行することも多くあるので、軽乗用車サイズのデッキバンは業務にピッタリという訳だ。デッキバンは街の電気屋さんの要望から誕生したのだ。
■人気からバリエーションを増やす
電気屋さんからの要望に合わせて新たにボディ形状を新設したとも言えるハイゼットはデッキバンのパイオニアと言える。それだけにデッキバンユーザーからはハイゼットの支持が常に一定以上あるということなのだろう。だから登場から今日までデッキバンがラインアップされ続けているのだ。
そんな絶対的需要を確保しているからか、軽自動車のデッキバンはダイハツの独自商品となっている。ダイハツだけがデッキバンを展開していると聞くとニッチなジャンルで需要が薄いと思ってしまうかもしれないが、そうとは言い切れない。その答えは2021年末のフルモデルチェンジにある。
ハイゼットと共により乗用車的装備を充実させたアトレーにも新たにデッキバンが用意されたのだ。これはレジャー要望が多かったためで、それだけデッキバンが人気であることを感じさせるエピソードだ。
デッキバンがボディは上から豪華装備のアトレー、Gグレード、ベーシックなLグレードという展開になっているが、実はアトレーが一番人気となっている。それだけ乗用車的にデッキバンを乗る人が増えているということではないだろうか。
コメント
コメントの使い方