5月21日、無事に閉幕したG7サミット広島首脳会議。会期中、広島市内を中心とした交通規制が敷かれ、県民をはじめ、世界中から広島を訪れた人々も首脳の移動に伴い足止めを余儀なくされたが、警察当局の万全の警備体制もあり、無事にサミットが幕を閉じた。ここでは首脳たちが使用したクルマに焦点を当ててサミットを振り返る。
文・写真/有村拓真
ドイツから輸送した防弾架装の特別仕様
話題沸騰の来日となったゼレンスキ―大統領をはじめ、各国首脳の移動に用いられた1世代前のBMW7シリーズ。もちろんこれはただの7シリーズではなく、「760Li High Security(F03)」という名称の防弾仕様車なのだった。ボディやガラス、車底に至るまで徹底した防弾架装が施されている。また、グリル内やドアミラー、後部ヘッドレスト付近には点滅式の青灯が備わっているのが特徴だ。
ゼレンスキー大統領の車列だけは警備上の理由により専用車が2台仕立てられており、ダミー兼予備として活躍した。国旗の掲出もなかった。
このモデルの前期型は2010年に横浜で開催されたAPEC横浜首脳会議でも各国首脳の移動でBMWジャパンが提供していたもの。当時は4代目モデルの防弾車(E67)も使用されていたが、さすがに今回は5代目モデル後期型の防弾車(F03)が活躍した。基本的にボディーカラーはブラックばかりだが、一部の首脳はシルバーボディーの車両に乗車していた。
過去にいくつかのサミット取材を行った筆者だが、メルセデスにしろ、BMWにしろ、このレベルの国際会議が行われる際は、ドイツ本国から高度な防弾仕様車を一時的に輸入し、現地法人が外務省と契約、国際会議終了とともに本国へ返却するということだ。つまり、これらの車両は日本には常時存在しない、レアなクルマなのである。
アメリカや中国でこのような国際会議が行われる際は、自国製のシボレーサバーバンなどの防弾車や第一汽車の紅旗を使用したが、それ以外のほとんどの国ではメルセデスやBMWの防弾車を一時的に輸入することが通例となっている。
また、カーキャリアに積載してメーカーの拠点からサミット開催地まで輸送することが通例となっているが、防弾車の車重の関係上、何台も積載できるカーキャリアであっても、2台程度までしか積み込むことができないようだ。
防弾仕様の詳細は、要人警護のセキュリティな面から、当然ながら公開はされていない。
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