G7サミットはなぜBMW祭りに? そもそもあのクルマって誰のもの?

バイデン大統領はビーストで広島を爆走

 外務省が用意したBMWに乗らない首脳といえば、アメリカだ。警備の関係上、現地で用意された車両には乗車せず、必ず自国より持ち込んだ専用車を使用するのが通例となっている。1960年代より米国シークレットサービスは世界中どこへでも自国の専用車を輸送するようになった。一説によれば、1950年代に南米を訪問していた米国要人の車列が襲撃され、防弾性能の乏しい車両だったため、ガラスが割られ要人が大けがを負ったという一件が教訓となっているようだ。

平和記念公園を後にするアメリカバイデン大統領の車列。ビーストは大人気でその迫力に興奮した観衆も多かった。米国は訪問地に本国からビーストを始めとした専用車を持ち込むのが通例となっている
平和記念公園を後にするアメリカバイデン大統領の車列。ビーストは大人気でその迫力に興奮した観衆も多かった。米国は訪問地に本国からビーストを始めとした専用車を持ち込むのが通例となっている

 今回のサミットでバイデン大統領は米海兵隊岩国基地に到着、そこから専用ヘリ「マリーンワン(VH-3D)」に搭乗して広島へリポートに到着、そして大統領専用車のキャデラック、通称「ビースト」に乗り込み行先地へ向かった。車列は例によって日米警護車両の共演となる。シークレットサービスが乗車するサバーバンの警護車や、電波妨害を行う通称ECM車と呼ばれるサバーバン、生化学物質等の検知や防護、緊急医療・救出活動などを行う通称HAMMERチームのフォードF550の黒い救急車。WHCAのフォードF350ロードランナーなど、大規模な車列で構成されていた。

 ちなみに狭い地理上、宮島ではサバーバンの専用車を使用し、島内の臨時ヘリポートと厳島神社などの会場へ移動していた。このサバーバン専用車は岩国基地内の移動でも用いられており、また、ジル・バイデン夫人も別の型式のサバーバン専用車を使用して広島市内で行われた配偶者プログラムに参加していた。

岩国基地内や宮島で活躍したサバーバンの専用車。防弾性能はビースト同様である
岩国基地内や宮島で活躍したサバーバンの専用車。防弾性能はビースト同様である

総理はセンチュリー総理専用車を使用

 サミット議長国を務めた岸田総理の移動には現行センチュリーの総理専用車が使用された。筆者が知る限り、この10数年以内に行われたサミットでは、現行型ではなく、型の古いセンチュリーやレクサスなどの専用車を現地で使用することが通例であった。(2008年の洞爺湖サミットでは環境がテーマだったので、当時最新のレクサスLS600h専用車が現地で活躍した)

 しかし、和歌山県での爆発物投てき事案や安倍元総理の一件もあってか、より安全性能の高い現行車が使用されたのだ。

 総理専用車には青色の識別灯が車体の前後に備わっているが、今回前面グリル内に装着された点灯式の青灯の上部に、さらに点滅式の青灯を装備していた。導入当初はなかったと思われる装備だけに、謎が深まる架装となった。また、他国と違って国旗を掲出せずに走行していたため、総理が通過したとわからず、「岸田さんはいつ通るの」と警察官に聞く光景も何度か見られた。

岸田総理の総理専用車。現行のセンチュリーを使用したが、グリル内に備わる識別用の青灯(点灯式)に加え、点滅式タイプが備わっていた
岸田総理の総理専用車。現行のセンチュリーを使用したが、グリル内に備わる識別用の青灯(点灯式)に加え、点滅式タイプが備わっていた

 次回、日本が議長国を務める国際会議では、トヨタがセンチュリーやレクサスの防弾車を多数製造し、各国首脳の移動をサポートする時代が来ることを切望したい。

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