海に囲まれ山が聳える日本の地形は言わずもがな複雑で、同じ道路でも極端なほど標高に差が出る。山のほうを目指して進む乗合バスとなれば、おのずと高い場所まで入っていくことになるが、最高何メートルに達するのだろうか。
文・写真:中山修一
■峠道こそ標高キング? 北海道の高地バス路線
まずは、自動車が通れる中でも高地の区間を含む、北海道に敷かれた道路を見てみよう。道内で最も標高が高いと言われる道が、十勝エリアを通る国道273号線の三国峠だ。
標高1,139mあり、頂上付近の展望台から景色を眺めれば、だいぶ高い場所にいると実感できるほどだ。問題は三国峠にバスが通っているかであるが、少ないながらも通っている。
道北バス・拓殖バス・十勝バスによる、帯広〜旭川を結ぶ都市間バス「ノースライナー」がそれにあたり、1往復だけ三国峠を通過する便が設定されている。
三国峠付近は人がほとんど住んでいない関係で停留所は置かれておらず、30km先の層雲峡、または14kmほど離れた十勝三股が両隣のバス停だ。
バスが通る道路で、三国峠に続いて標高が高いのは国道39号線の石北峠だ。頂上の標高1,050mと、千メートル級の峠越えを経路に含むのが、北海道中央バス・北見バス・網走バスによる「ドリーミントオホーツク号」だ。
ドリーミントオホーツク号は、札幌と北見・網走を結ぶ都市間高速バスである。愛称の響きから夜行バスのようなイメージを抱くものの、1日9往復ある便のうち全てが昼行で、1往復のみあった夜行は2023年5月現在運休している。
一般路線バスが高地を走行する例では、国道334号線のうち標高738mの知床峠を越える、斜里バス/阿寒バスの羅臼ウトロ線が有名どころ。
知床峠は豪雪で知られ、冬場になると道路が雪で埋もれてしまうため、羅臼ウトロ線は毎年6〜10月頃までの季節運行となっている。
■やっぱり真ん中あたりが超高い? 本州の高地バス路線
本州には、よくこの場所に道路を作ったな、と思わせるほどの高地路線が集中している。国道としてなら、群馬県〜長野県を繋ぐ国道292号線の渋峠が最も標高が高く、2,172mに達する。
二千メートル級を誇る渋峠にも、頂上付近にバス停留所が置かれている。「渋峠」とバス停名称はそのままで、長電バスの急行志賀高原線が停車する。4〜11月までの季節運行となっており、1日1往復だ。
県道を含めると、さらに高い場所に敷かれた道路が登場する。車が通れる道の中で言えば、県道5号線「乗鞍エコーライン」が2,716mと最高峰に位置している。ここにも何とバスが来るのだ。
岐阜県と長野県の県境に最高地点がある。アルピコ交通の一般路線バス、乗鞍高原〜乗鞍畳平シャトルバスが乗り入れており、バス停にまで「標高2716m」という名前が付けられていて大変分かりやすい。
このシャトルバスでは、天候に応じて3〜11往復まで本数が変わるユニークな運行スタイルを採っている。超高地だけに季節運行であるのは想像通りで、標高2716mバス停まで行くのは毎年7〜10月の短い期間だ。
一方で、特に標高が高く、バスの停留所が設置された高速道路はどこかと言えば中央自動車道だ。1,015mまで高度を稼ぐ区間があり、頂上付近に「富士見バスストップ(中央道富士見)」が置かれている。
富士見バスストップには、岡谷・上諏訪と新宿を結ぶ、アルピコ交通、京王バス、富士急、JRバス関東などによる都市間高速バスが停車する。通年運行で、おおむね1時間に1本の設定だ。